newカシオンと北星の物語 第3話
僕らの朝は早い、ようやく住み慣れた鹿児島に朝日が昇る。時計を見たら朝の6時、目を覚ますと隣にははまなすの姿だけで、北星の姿はなかった。僕は立ち上がってリビングに向かう。
北星はリビングで朝食を作っていた。
「あ、カシオン!おはよ!」
「北星…おはよぉ…」
眠たい目をこすって椅子に座る、丁度良いタイミングで北星が料理を運んできた。
北星は料理を作り終えるとエプロンを脱いで仕事の支度をしていた。北星の仕事は朝早くて、今日はきっとかなり遅い時間に帰ってくるのか、もしくは明日の朝に帰ってくるのかは分からない。
「あ、カシオン。はまなすの分は冷蔵庫に入れておくから、起きて来たら温めてあげて!」
「分かった!北星は今日は帰ってくる?」
「うーん…ちょっと分からないわね、この時期忙しいから別の乗務が入ってくるかも」
やっぱり今日も遅くなる事は確定だ。でもそれが北星の仕事だから仕方ない。その代わりに僕がはまなすと一緒にいてあげてるから、北星も安心して仕事に行ける。
そして北星は
僕も朝食を食べてゆっくり仕事の支度をする、そうしてる間にはまなすが起きて来た。
「お父さん…おはよ」
「おはよ、今からご飯を温めてあげるから席に着いて待ってるんだよ」
「うん…」
はまなすは椅子に座るとテーブルに頭をつけてまた眠ってしまった。
ちなみにこうするのははまなすの日課みたいなものだ、朝が弱くて座るとすぐ寝てしまう。
そして北星は支度が終わると早々に家を出てしまう。
「じゃあカシオン、はまなすの事お願いね?」
「うん、行ってらっしゃい!気をつけてね」
北星は大きなバッグを持って仕事に向かった。
僕はとりあえずはまなすを起こして北星が作ってくれた料理を温めなおす。
北星の料理は温めても、出来立てでも美味しいのだ。
そんな感じで自分も仕事の支度をして、はまなすを連れてく準備もしていた。
ちなみに僕の仕事はサラリーマンで、主に物の仕入れと値段の計算などPCを使う事が多い仕事だ。
そしてはまなすを仕事近くに連れていくのも理由がある、それは会社の中にある私立の小学校に連れて行く為だ。
しばらくして僕とはまなすは家を出て会社に向かった。
会社へは歩いて20分くらい、この鹿児島の光景も当たり前のように見るようになったのも…あの出来事があったからこその生活だ。
さあ、あの駅弁の出来事が起きてから1日後に北星から渡されたメモの番号に電話をかけた。
すると電話に出たのは北星ではなく、また別の女性の声だった、
「はいもしもし?」
北星ではない人が電話に出て慌てる自分。
「あ、あの…北星さんの電話でよろしかったでしょうか?」
「あら、もしかして北星のお友達かしら?」
「えっと…この電話にかければ良いと北星に言われたのですが…」
「あーなるほどね!ちょっと待ってて」
そしてしばらくして聞き覚えのある声が受話器から聞こえてくる。
「もしもし?もしかしてカシオン君?」
「あ、北星さん?よかった…電話間違えたかと思ったよ」
「あはは、ごめんね!さっきのは私のお母さんなの」
やはり母親だったのか、声は北星に似てたけど少し違ってたからその通りだった。
「でも良かった、ひょっとしたら電話がかかってこないんじゃないかって心配したよ」
「北星から電話番号を教えてもらったのにそんな事はしないよ」
なんて言葉でお互い笑い合う。気づいたら一時間以上も話していた、こんなに話した事は僕は今まで1度もなかった。
いろいろ雑談したり面白い話などもしてテンションは高く、いつの間にかお互いを呼び捨てで呼び合うまでになっていた。
「カシオンは高2で私より3つも年上だなんて、ちょっと意外だったわ」
「僕の方こそ、北星の方が年上だと思ってたよ。まさか中2だったなんてねw」
「あははwないない、カシオンが女っぽいからてっきり同じ年だと思ってたw」
「ちょっとそれどう言う意味!?」
確かに僕はよく女の子っぽいとクラスのみんなからも言われる。それどころか、知らない男子からラブレターをもらった事だってあるくらいだ。もちろん相手は僕が男子だとは思っていなかったんだろうね。
そして北星がこんな話をしてきた。
「そう言えばカシオンはどこに住んでるの?」
「仙台だよ、仙台駅から車で10分くらいの場所だよ!」
「そうなんだ!私は北海道の札幌駅の近くだよ!」
「わぁーそれいいなぁ…北斗星にもカシオペアにも乗れるじゃないか」
「えへへ、羨ましいでしょ」
そんなこんなで話をしてたら僕のお母さんが長電話し過ぎと注意してきた。流石にそろそろ切ろうかと思ってはいたが…。
最後に北星とまた会う約束をした後電話を切って、その後僕のお母さんがこう聞いてきた。
「嫁でも出来たのかしら?」っと。
僕はアタフタして否定はしたけど、現に僕は今僕のお嫁さんになっているからこの時はそんな事になるとは思わなかったんだろうねぇ。
「ただいま〜」
家に帰ると珍しくはまなすと北星が帰っていた。
「お父さん、お帰りなさい!」
「カシオンおかえり!」
「あれ、北星?仕事はどうしたの?」
「実は電車が遅れた影響で乗務する列車がズレちゃってね、それがたまたま早く帰れる乗務に組み込まれてね」
どうやら今日は北星が乗ってた路線の列車が大幅に遅れたらしい。
「じゃあご飯を作ろうかしら」
「はまなすも手伝う!」
北星とはまなすはキッチンに向かってそのまま歩いていく。
僕はカバンを椅子の上に置いて服を脱ぎに和室へ向かう、そして部屋着に着替えてリビングに戻るとはまなすが僕の仕事カバンを豪快に振り回していた。
「うわぁぁ!?はまなすぅぅぅ!それ仕事の大事なカバンだから振り回さないでぇぇぇ!!!」
「あははははははw」
北星は呆れたような感じでキッチンから見ている、いや北星…君も止めてよ。
そんなこんなでカバンを無事に回収したところで料理が揃って3人で一緒に頂いた。
こんな毎日がいつまでもあるから飽きずに楽しく過ごせるんだろうな。
つづく!