みちのく旅行記

みちのくです!仕事の休暇はよく旅してます!

newカシオンと北星の物語 第6話

ピザの配達を頼んだ直後、まさかの北星が帰って来るという修羅場になっていた。

はまなす「お母さんお帰り!!」

北星「ただいまー、お父さんはどこにいる?」

はまなす「お父さんはリビングだよー!」

カシオンはまさか北星が帰って来るとは想像してなかっただろう。この時カシオンが焦ってた理由は、ピザを頼んだ量が少なかった事だった。

北星の分までは考えておらず、多分三人で食べるとなれば足りなくなるのは目に見えていた。

カシオン「やばい…追加注文って出来るだろうか?」

慌ててピザを追加で注文できた事でギリギリセーフだったが、もしそれが出来なかったら北星から何か言われてたかもしれない。

はまなす「お母さん!今日のご飯はピザだって!」

北星「あら、珍しいわね。何かあったの?」

カシオン「実は疲れてて食材買うの忘れちゃってさ、夜遅いしはまなすだけ留守番させるのも悪いと思ったから。それに、偶にはこういうのもいいかなって」

上手く誤魔化せたが、もし北星がもっと遅くに帰って来てたらどうなっていたかと思う。

 

 

カシオンと北星の親が話をしている時に北星が部屋から出てきて僕の傍に来た。

北星の父「見ての通り、まだまだ未熟な娘だがこんな娘でもよろしく頼むぞ」

カシオン「いえいえ、こちらこそ…」

そして会話は思わぬ展開に発展する。

北星「お父さん、私明後日もまた爺ちゃんの家行って来るから」

北星の母「あら…また行くの?」

北星の父「いい加減学校に行ったらどうだ?先生だって別室で授業をやってくれると言ってくれてるんだぞ?」

北星「嫌!あんな学校は二度と行きたくない!!」

北星の怒鳴る姿は会って以来初めて見た、そこまでして学校に行きたくない理由があるのだろうか?

学校の事で何やら目の前で討論になっているが、僕はその間に入り込む形で北星に聞いてみた。

カシオン「北星、そこまでして学校に行きたくない理由はあるの?」

北星「もちろんあるわよ!あの先生達はみんな嘘つき、私が助けてと言っても助けてくれないし!しかも職員室で聞いたもん…私が嘘を言ってるって!!」

北星の母「ちょ…ちょっと待って、それは初耳よ?」

北星「当たり前よ!!話した事ないし!」

北星の父「ならどうしてそれを話してくれなかったんだ」

北星「だって…どうせお父さんやお母さんだって先生の方を信じるくせに!私の事なんて何も聞いてくれないじゃない!!!」

そう言って北星は自分の部屋に駆け戻った。

カシオン「…すいません、余計な事言ってしまいました…」

北星の父「いや、カシオン君は悪くない。むしろ君がいてくれたから北星が学校にいかない理由がもう一つ分かったかもしれない」

北星の父親はそう言うと部屋から出ていった。

北星の母「カシオンさん、多分明日からしばらく私達はここを留守にすると思うわ」

カシオン「え?」

北星の母「北星がさっき言ったように、もしその事が本当なら…私の夫は先生達をかなり問い詰めるでしょうからね。それで…その間の事なんだけど」

北星の母親はカバンの中から封筒のような物を取り出して自分に渡してきた。

中を見ると切符が3枚、しかもその一枚にはこう書かれていた。

 「札幌~大阪 B個室ツイン トワイライトEXP

それを見た瞬間自分はゾッとした、これはあの紛れもない豪華寝台特急トワイライトエクスプレス」のチケット。しかも個室のツインという事は二人で行く事前提だという事だ。

この切符を見て自分は察した、これは北星と僕が乗るために買われた切符だって。

カシオン「これって…?!」

北星の母「明日のチケットです。元々カシオンさんが来られるとの事でしたので、お爺さんの方も北星には良い経験だと言われましてね。もしご予定が無ければの話ですけど…」

カシオン「ですが…いいのですか?こんな高いものを…」

北星の母「構いません、これは私の夫の提案でもありますので。同時にカシオンさん、あなたは私の夫に試されてると言うのもあります」

カシオン「試されてる…?」

北星の母「カシオンさんが私達の娘に見合うかどうか…と言う事ですね」

カシオン「ちょ…ちょっと待って下さい!確かに僕と北星は仲が良いかもしれません、ですがそこまで自分は考えてもいませんし…それに、この切符を見ての通り…いくら寝台とはいえ同じ部屋の中で異性が泊まる事はあまり好かないのじゃないですか?!」

北星の母「もちろん夫は反対してました、ですがきっと…さっきの北星が本音を明かした事でカシオンさんに対する印象は大きく変わったのでしょう。でなければ、本当はこの切符も「渡すな」と言われて止められたでしょうから」

つまり北星の父親が部屋を出ていったのは、自分の印象が変わって拒む必要が無くなったからだと北星の母親は言う。

北星の母「あの人もあの人なりに認めたくない部分はあるのでしょうけど、一番望んでるのは娘の幸せですから」

カシオン「ですが…それとこの切符には何の関係が…」

北星の母「それは行けば分かります」

北星の父「話は済んだか?」

北星の父親が部屋に戻ってくる。

北星の父「学校の先生と連絡を取った、明日にでも話を聞きたいとの事だ」

北星の母「そういう訳ですからカシオンさん、どうかその間は娘をお願いできませんでしょうか?」 

カシオン「本当に自分でよろしいのですか…?」

北星の父「俺が少し認めたんだ、男ならとことん尽くしていけ」

カシオン「……分かりました。ですが帰りは…」

北星の父「それも行けば分かる」 

そう言って北星の親は部屋を後にした。

それからしばらくして僕は北星の部屋の目の前まで来ていた。中からは泣き声が聞こえてくる。僕はゆっくり扉を開けるとそこには泣きじゃくる北星の姿があった。

泣いてる北星を僕はただ見てるだけしか出来なかった。しばらくして北星が泣き止んだ後に僕は言葉を発した。

カシオン「北星、明日から少し出かけてみないか?」

北星「…明日?」

カシオン「なんかいろいろと溜め込んじゃってるみたいだし、気分転換に…どうかな?」

北星「…うん、分かった。明日ね…」

それからしばらくして僕は北星の家を後にして祖父の家に向かった。

 

早速明日の準備をする中、カシオンが一番気にしていたのは北星がまだ隠し事をしているのではないのかと言う事。もしそれが本当なら学校に行かない理由は今日言われた事以外にもあるという事だ。

カシオン「…」

カシオンの祖父「申告そうな顔じゃの…」

真剣に考えながら準備している時に自分の爺ちゃんがやってきた。

カシオン「ねえ爺ちゃん。爺ちゃんって昔に誰かの事を思って悩んだりした事ってない?」

カシオンの祖父「そうじゃのぅ…若い頃に二回…三回くらいあったかのぅ」

カシオン「その時爺ちゃんは、どういう風にして答えを探してたの?」

カシオンの祖父「…答えなど初めから期待してなっかったのぅ、なるように考えて進んで…挫けたら諦めてはまた考え、最終的には自分が納得するような結果を見つける事ができたのじゃ。要は経験じゃな…」

カシオン「経験…」

カシオンの祖父「もしかしてじゃが、カシオンは初恋の人でも見つけたのかのぅ?」

カシオン「それはまだ分からない…でも、何か放っておけなくて。事情は理解したつもりでも自分から答えを探そうとしてもなかなか出て来ないんだ」

カシオンの祖父「そういう時こそ、自分で経験して見つけ出すもんじゃよ」

そう言って祖父は寝室に戻っていく。

自分も早めに寝て明日に備えるその先が過酷である事も知らずに…。

 

続く!