はまなす「つまり…お父さんとお母さんは最初はお爺ちゃん達に嫌われてたの?」
カシオン「まあ…そんな感じかな」
北星「少なくとも私のお父さんからは今ほど好かれてはなかったかな…」
はまなす「じゃあ、その後どうなったの?お父さんがお母さんを連れて大阪に行くんでしょ?」
カシオン「ただ普通に行く訳じゃないんだ、その時乗った列車が特別だったからね」
はまなす「とくべつ~?」
北星「トワイライトエクスプレスって言って、大阪から北海道を走ってた緑の豪華な電車よ」
はまなす「緑?!青色とかじゃなくて?!」
カシオン「そっか…はまなすが生まれて来た頃にはもうその列車は無くなってたからね」
北星「でも本当に豪華だったわよ、食事から車内まで全てね」
あの一夜から翌朝、僕と北星は午後に札幌駅で合流し4番線ホームで待っていた。そして13時半頃になった時、ホームの端から僕らが見慣れぬ緑の客車が現れる。
北星「何あれ?!」
カシオン「これが…トワイライトエクスプレス…」
目の前に飛び込んできた光景に思わず声が出てしまった。客車全体が緑色でラインが黄色、そしてあの独特なトワイライトエクスプレスのマーク、ホームにいたシェフの人達が客車が目の前を通り過ぎた後に深く一礼してる。さらにトワイライトエクスプレスの姿を見ようとたくさんの人達がカメラを構えて列車を撮ってる。
自分はよくこの人気の寝台列車の切符を北星の母親が手に入れられたと思っていた。
所定の時間より大幅に遅れて札幌駅に到着したこの列車は清掃の為に30分も使うという。やはりそれだけ念入りに清掃して綺麗にしてるのだろう。
カシオン「思ってた以上に凄すぎて興奮してしまった…」
北星「私も…初めて見るし、北斗星に乗ってたからそこまで変わらないかなって思ってたけど全然違いすぎる…」
カシオン「所定の時間よりはかなり遅れて発車するみたいだけど、とりあえずここで待ってようか…」
この美しい緑の客車を取り囲むようにあちこちにカメラを構えた人達がホームをぎっしり埋め尽くしてる。それもそのはず、この列車はそれほどまでに有名で人気の列車なのだから。
トワイライトエクスプレスは1989年7月21日に団体専用列車として登場した。当時はツアーなどでしか乗れない列車だったが、その人気はさらに広まってついに一般で売られるように臨時列車となって2015年3月12日まで運行されてた列車だ。つまり今はもう走ってない列車なのである。
でも何故そこまで人気だったかと言うと、何よりその列車が豪華な上に安く乗れた事、そして食堂車の料理が好評だったなど様々な理由がある。特に食堂車のディナーコースは北斗星のディナーコースにも引けを取らないほどであるくらいだ。
それほど人気のトワイライトエクスプレスの切符はどんなに頑張ってもなかなか手に入らない品物である。だから北星の母親がどうやってこの切符を手に入れたのか知りたいくらいなのである。
そしてようやく清掃が終わり、僕らはトワイライトエクスプレスの車内に入ってく。
車内は何とも言えない高級感が漂っていて、僕らの部屋であるB個室ツインもこれまた凄かった。
巨大な一人用ソファーが向かい合ってる状況で二つ置いてあり、これが夜間はベッドに代わってしまうみたいだ。でもツインと言うには小さい感じがしたら、よく見ると天井にもう一段ベッドが隠れていた。
どうやら昼間は天井近くまで上げておく事で広々と部屋を使えるようにしているのだろう、夜間になったらボタンを押して上段ベッドを下にスライドさせて使うようになってるらしい。
部屋の広さと設備の充実さに僕らは驚きすぎて言葉が出なかった。
そんなこんなしてるといつの間にか列車が出発し始めた。
「みなさまの思いを乗せて、トワイライトエクスプレス、札幌駅を発車しました」
そんな摩訶不思議な車内放送が辺りに流れる。
カシオン「なんだろう、何故か心がドキドキしてきた」
北星「わ…私も」
さてさてここからはトワイライトエクスプレスから見える車窓についても物語を続けながら解説していこう。(作者の見解やウィキで調べた内容なので確かな情報とは違うかもしれませんが、そこまご了承下さい)
札幌駅を出発したトワイライトエクスプレスはしばらくすると有珠山と昭和新山の近くを通る。有珠山は一見車窓から見るとどこにでもあるような山に思えるが、実はそうではない。
有珠山の歴史はとても古く、噴火を何度も繰り返して押し上げて出来た山になってる。その後に山が崩れ落ちた事もあったらしい、その為見ても分かるように山の肌が完全に露出してる状態になっている。
そしてその有珠山の隣には昭和新山がある。ここは北海道の有名な場所でもあり、日本の地質百選にも選定されている。
そして洞爺湖有珠山ジオパークと言えば聞いた事がある人もいるかもしれない。
ジオパークとは簡単に言えば大地の公園、もしくは地質公園と言う。自然に出来た特殊な地形などの遺産を保全して教育などに役立てて開発を進める場所で、周囲には洞爺湖や昭和新山、有珠山がその対象になっている。
洞爺湖は比較的有名なので聞いたことがあるかもしれないが、有珠山はあまり聞いた事がないかもしれない。しかし有珠山の頂上から眺める景色はかなりすごいものであるらしい。洞爺湖から周囲の街を一望出来ると聞いたことがある。
カシオン「僕ら北海道にはよく来るけど…実際観光地ってあまり巡った事がないよね」
北星「CMとかではよくやってたりするけど、地元だからいつでも行けるって思っちゃうのよね」
そんな事してる間に列車は洞爺駅に到着、ここを出発すると新潟県の新津駅までは降りる事が出来なくなる。
カシオン「北星、実はさっき気づいた事なんだけど…」
北星「ん?どうしたの?」
カシオン「僕ら、夕食ってどうすればいいんだろうか?」
北星「…あ」
確かによく考えてみたら、今まで寝台列車には何度か乗った事があるが昼間から寝台列車に乗るなんて事は基本なかった。その為弁当の存在をうっかり忘れていたのである。
カシオン「…そういえば、北星のお母さんから行く前に何か封筒を渡されてたんだ」
北星「封筒?」
カシオンが北星の母親から受け取ったと言う封筒を開けてみると、そこには「トワイライトディナー券」「トワイライト食事予約券」と言う物が入っていた。
カシオン「何だこれ…」
北星「私こんなの初めて見るけど…どこで使うやつなの?」
カシオン「食事券なのは分かるけど…」
カシオン達は予約券を握りしめたままどうすれば良いのか迷っていた。
知ってる人はもうお分かりだろうが、「トワイライトディナー券」と「トワイライト食事予約券」とは、食堂車で提供されるディナーの予約券の事である。
トワイライトエクスプレスと言えば、一位にスイートルーム、二位に食堂車と言われるほど食堂車の人気はかなり高い。そしてカシオン達が手にしてる予約券はあのトワイラ
イトエクスプレスで大人気のディナーコースが楽しめる食事券なのだ。
そのコース料理はどれを見ても絶品料理だった。フランス料理のフルコース、聞くだけでは分からないかもしれないが調べてみればその料理がどれだけ美味しそうなのかが分かる。詳しくは以下に記載してあるブログをご覧下さい、かつてトワイライトエクスプレスで提供されていたディナーのフランス料理がどんな料理だったのかが分かります。
そんな事は知らずにカシオンと北星は食事券を眺めたままずっと悩まされている。
カシオン「19:30の10分前に食堂車に来てくれって書いてあるけど…これって使っても大丈夫なのだろうか?」
北星「お母さんから渡された物だから大丈夫じゃないかな?」
カシオン「今の時間はまだ18時…とりあえず車内でも探検する?」
北星「そうだね!せっかく乗ったのに部屋に閉じこもっていてももったいないし」
そう言いつつカシオンと北星は自分の部屋を出て4号車に向かった。
つづく!