みちのく旅行記

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オリジナル物語「時空警備隊」 第10話

 

第10話

 

城内へ侵入したキウシ達は、ミリアの道案内のおかげで最短ルートにてハルス王の元へと駆け抜けていた。

ミリア「1度ハルスの所に赴いてるからね。城の中の事は既に知ってるわ!」

キウシ「おかげで分散進撃しなくて助かる。このまま一点突破だ!」

次々と出てくる警備兵達をなぎ倒しながら、キウシ達は前進していく。

そしてしばらく走った先に大きな扉が立ちはだかる。

ミリア「この扉の先に、ハルスがいるはずよ」

キウシ「全員…心の準備はいいか?」

そう聞くと、全員頷く。

キウシ「よし、行くぞ!」

キウシは手をピースにして目の所に構える。

これがメガとギガの力の初歩の技だが、威力は抜群の技。

キウシ「ギガビーム!!」

そう言い放つと、目の当たりから光の光線が放たれ、扉を破壊して奥へ貫通する。

そして破壊された扉を乗り越えた先にたどり着くと、多数の警備兵と中央の王座に座ってる人物がいた。

ミリア「あそこに座ってるのがハルスよ!」

ミカン「アイツが…ミリアに酷いことを…」

アランとムーンは既に戦闘態勢だった。

しかしキウシだけはハルスを見るなり緊張していた。

キウシ「やはりか…」

他の4人はキウシの発言にどうしたかと思っていたが、その時ハルスが立ち上がる。

ハルス「よく来たな、ミリア。我の女王となる決心がついたのかな?」

高らかと言い放つハルスの言葉に、ミリアは怒り心頭だった。

ミリア「ふざけるんじゃないわよ!私はあんたを一発ぶん殴りに来ただけよ!」

その返答を聞いたハルスは、ならば仕方がないというような感じになり。

ハルス「ならば、ここで消え失せよ」

そう言うと、ハルスの周りを黒いオーラのようなものが包み込む。

その様子には周りの警備兵も驚きを隠せてないようで、慌てて壁際に下がりだす。

キウシ「お前のそのオーラ。やはり黒の強液を摂取したんだな!?」

アラン「黒の強液…?」

キウシ「あぁ、本来この時代にはあってはならない品物だ」

黒の強液、西暦2700年に超能力者の対抗策として突然開発された新薬とも言われていたが、その実態は自分の肉体や精神を闇に支配させ、強大な力を手に入れる事が出来るものだった。

そしてその力は強大なあまり、それに関連する被害で死者が出たりした事態もあった。

時空警備隊は全力でこれを抑え込み、開発者も特定して逮捕し、開発された黒の強液は全て回収したとされていた。

キウシ「だが、やはり一部はまだ出回ったままで、使われないまま保存されているんだな」

アラン「キウシ、その黒の強液はどれくらいの力があるの?」

キウシ「…俺達時空警備隊には、俺も含めて6人の最強メンバーがいるとされてるが、そのうち3人いないと抑え込めない力とされている。もちろん、それは黒の強液を摂取した量にも比例するが…」

ムーン「しかしキウシさん、だとしたらハルス様はその黒の強液に支配されているだけで、ハルス様の意志はまだ残っておられるのですよね?!」

キウシ「まあな…だが……」

キウシは知っていた、黒の強液を摂取した人の最後の結末を。

キウシ「黒の強液を摂取した奴は、その力が失われると、そのまま身も全て砕け散る……。しかし、ハルスを倒さないと、この時代に多大な影響を及ぼす事になる」

ミカン「つまりそれって……」

キウシ「……ハルスを、殺さなくてはならない」

時空警備隊のルールでは、黒の強液を摂取した人を抑え込むのは殺すしかないとされてる。

つまり、黒の強液を摂取した人を救い出す方法はないのだ。

ミリア「そんな……」

ムーン「なんでそんな事に!!」

キウシ「説明してる場合でもない!来るぞ!!」

話をしてる間にハルスは既に戦闘態勢になっていた。

さらに闇に侵されてしまったハルスの肌は黒色に染まり、体の形も化け物みたいに豹変していた。

警備兵はその姿を見て怖くなり、全員逃げ出してしまった。

ハルスの事をよく知ってたミリアとムーンはその姿に驚愕する。

そして油断の隙もなく、ハルスから突然触手のようなものでミリアとムーンが張り倒され、そのまま壁に突き飛ばされてしまう。

ミリア「かはっ…」

ムーン「ぐっ……」

2人とも壁にぶつかった勢いでそのまま地面に倒れ込んでしまう。

ミカン「ミリア!!」

アラン「ムーン!!」

キウシ「ちっ…これは相当な量の強液を飲みやがったな…」

キウシ (正直アラン達が今の場合は足でまといになってしまう。かと言って俺1人で何とかなるとは思えないが…)

キウシを意を決したように、2人に叫ぶ。

キウシ「ミカン!お前は倒れた2人の傍にいろ!アランは俺と共同でハルスを倒すぞ!」

ミカン「わ、分かった!」

アラン「はいよ!」

ミカンはすぐに倒れた2人の所へ駆けつけ、アランはキウシの傍に来た。

キウシはネクタイソードを構えるが、やや不安を抱えていた。

キウシ「アラン、正直力不足だと分かって呼んだが、行けるか?」

アラン「まあ何とかするわ…、今回は鞘は無しでも良いのよね?」

キウシ「当たり前だ。本気で頼む」

アラン「分かったわ」

アランも刀を抜いて構える。

ハルスはキウシとアランに攻撃を仕掛ける。

2人ともギリギリの所でかわすが、アランが僅かに遅れていた。

アラン「くっ…!まだまだよ!!」

アランは態勢を立て直すと、そのままハルスに突っ込んだ。

ハルスは再び触手で攻撃を仕掛けるが、アランはそれを詠んでたように刀で触手を叩き切る。

キウシもアランが作った隙を突いて、ハルスに特攻を仕掛けるが、1歩手前でバリアのようなものに阻まれる。

キウシ「やはりダメか!」

キウシはすぐに下がるが、アランは後退が遅れて触手に足を掴まれる。

アラン「しまっ…!!」    

掴まれたと同時に壁に向かって投げ飛ばされ、そのまま壁に激突。

当たりどころが悪かったのか、そのまま気絶してしまった。

ミカン「アラン!!」

アランが抜けた穴を埋めようとミカンがキウシに駆け寄ろうとするが。

キウシ「ミカン!来るな!」

キウシは慌ててミカンを止める。

ミカン「で、でも!!」

キウシ「命を粗末にしたくないなら、アラン達の傍にいろ!」

キウシの真剣な目に、ミカンは従うしかなかった。

しかしキウシは焦っていた。

ハルスの力はキウシ1人で抑え込めるほどではなく、既に危険だと言わざるおえない状況だったのだ。

さらに、キウシは攻めの技は色々持ち合わせているが、守りの技がないのだ。

せめて何かで守りだけでも固めたいと思い、辺りを見回す。

周りには警備兵達が捨てていった鉄の装備などばかり。

するとキウシは突然VYモードに変化し、落ちてる鉄装備に向かって手をかざす。

キウシ「一か八かだ。せめて攻撃を凌ぐ事さえ出来れば!」

キウシは時空警備隊の6人の中では特質した強さを持ち合わせていない。しかし、それでも6人の中にいられる理由は、多様な状況に応じる事が出来る技などを持ち合わせ、さらに生成する事が出来るのがキウシの特徴なのだ。

その生成能力を持つのがVYモードなのである。

キウシが手をかざした鉄装備は突然消える。

そしてキウシは心の中で捻出する。

キウシ (鉄…分解…凝縮…固化…)

落ちてた鉄装備はキウシの中に1度吸収され、自分の念じたように物を変化させ、そしてそれを生成する。

その間にハルスは触手でキウシに攻撃をしかける。

キウシ「これならどうだ!鉄防壁!!」

キウシが再び手をかざすと、地面から巨大な鉄の壁が姿を表す。

そして触手はそのまま鉄の壁に攻撃するが、1度では壊れなかった。

キウシ (これで時間は稼げる。しかし、あれだけの数の鉄ではそう長くは持たないはず…)

キウシはこれでアラン達に被害が及ばないのを確認すると、VYモードを解除し壁を乗り越えてハルスに攻撃をしかける。

キウシ「ギガビーム!」

キウシの放った光線で触手は溶けていくが、ハルスには周りのバリアみたいなものに防がれて攻撃が通らなかった。

キウシ「このままではジリ貧か…」

 さらに溶けた触手などはそのまま再生し、再び攻撃を仕掛けてくる。

そんな時だった。

「ギガボンバー!!」

突如として打撃力の強い攻撃がハルスに直撃し、バリアを破壊してそのままハルスに命中する。

ハルスは1度倒れるが、再び立ち上がる。

「ちっ…流石にかてーな、敵さんも」

突然現れた人物は1度ハルスから離れてキウシの元に降り立つ。

キウシ「遅いぞ、ダイキ」

ダイキ「悪ぃ悪ぃ、道に迷っちまってな」

高らかに笑ってるのは応援に駆けつけたダイキだった。

「とりあえずこっちは人を固めてメガバリアを張っておいた。もう攻撃が通る事はないだろう」

そう言ってミカン達の方から歩いてきたのは、カブトマンだった。

アラン達を1つに固めて、ミカンも含めてメガバリアで守る結界を作ったのだ。

キウシ「状況を説明しなくても分かるよな、2人とも?」

ダイキ「見りゃ分かるわ、黒の強液だろ?」

カブトマン「まーだあんな物が隠されてたとはな」

突然の出来事に状況を認識しきれていないハルスだが、容赦なく攻撃を仕掛けていく。

ダイキ「バリアは破壊してやったぜ、さっさと終わらせて飯にするぞ。こっちは腹ぺこなんだよ」

キウシ「お前は相変わらず…能天気だなぁ…」

カブトマン「まあ、こっちは調査帰りにいきなりここに出張だからな。腹が減ってるのは事実だ」

キウシ「なら、とっとと終わらせるぞ」

そう言うと3人は構える。

キウシ・ダイキ「ギガファイナル!!」

カブトマン「メガファイナル!!」

すると突然3人から強大なオーラが放たれる。

そして先に攻撃を仕掛けたのはダイキだった。

迫り来る触手の攻撃を交わしつつ、ハルスの傍に近寄ると、重たい拳の連撃を食らわせる。

ダイキ「おらおらおら!!くたばれ!!」

ハルス「がっ……!」

体が変形するほどの打撃の連続に、ハルスの動きは止まり、キウシとカブトマンがたたみかける。

キウシとカブトマンはギガビームの構えを見せるが、キウシが右手で右目にピースの指をかざしてるのに対し、カブトマンは左手で左目にかざしていた。

キウシ・カブトマン「メガギガビーム!!」

2人の光線が渦のように発射され、それがハルスに直撃する。

体の半分が溶けるほどだったが、ダイキがさらに攻撃を仕掛ける。

ダイキ「こいつで終わりだ!ギガボンバー!!」

ダイキの両手を握った状態の手がハルスの顔面に直撃し、さらに衝撃波のようなものも加わって、ハルスは倒れる。

そして、黒ずんでた肌の色は肌色に戻り、黒いオーラもたちまち消えていく。

ダイキ「よっしゃ、一件落着!」

カブトマン「思ったより強液を含んでないようで助かったな」

キウシ「あぁ……」

3人は戦いが終わると、強く放ってたオーラは消え去る。

ダイキ「おぉ、丁度良い時に時間切れか」

キウシ「あと少し長引いてたら厄介だったな」

そしてカブトマンが張ったバリアの方では、ミリアとムーンが既に目を覚ましてキウシ達の戦いを見届けていた。

そして戦いが終わると、ミリアはボロボロの体のまま、ハルスに駆け寄る。

ハルスは僅かに息をしているが、絶命はもはや時間の問題であった。

ミリア「ハルス……」

ハルスの姿はもはや人間の形を留めてなく、まさに化け物のままだった。しかし……。

ハルス「……ミリア……」

その声にミリアは反応する。

ミリア「ハルス……あなた…」

ハルス「…あれ…なんで……ミリアが…ボロボロ

…に……」

明らかに今までのハルスの反応と違っていた。

ミリア「まさか…!ハルス…、元に戻ったの!?」

ハルス「…え……僕は…商人に…お礼を貰っ…て……あれ…何した…んだっ…け……?」

キウシ「……」

キウシは知っていた。闇の力を抑え込めれば、本人を元に戻す事が出来る事も。

しかし、黒の強液に侵食された体はどのような措置を施しても、治る事はないと。

ミリア「待ってて!直ぐに治してあげるから!!」

ミリアがハルスに回復魔法みたいなものをかけるが、案の定効果がなかった。

しかしキウシはその事に口を挟まなかった。

ミリア「どうして…!なんで…!なんでよ!!」

必死に魔法をかけ続けているが、効果はない。

そしてハルスの意識がだんだん遠のいていく。

ミリアはボロボロ泣きながらも叫び続ける。

ミリア「なんでよ!なんで今になって…元に戻るのよ!!ハルス!!!」

ハルス「……ミリ……ァ…」

そしてそのままハルスは息を引き取った。

ミリアは何度もハルスを揺さぶって起こそうとするが、ハルスが目を覚ます事は二度となかった。

その現実を受け入れた瞬間、ミリアは泣き崩れた。

何度も何度もハルスの名前を叫びながら、ムーンもハルスの傍に立ち寄り、泣いていた。

ムーン「どうして…どうしてですか…ハルス様……」

ミリアとムーンはお互いにハルスを知ってただけに、その存在の消失はあまりにも重すぎたのだった。

キウシとダイキ、カブトマンはその光景を遠い所から見ている事しか出来なかった。

キウシ「助けてあげようどしたが、出来なかった。黒の強液を使った者たちがこのような悲しみを増やさない為に努力してきたつもりだったが、やはり…ダメだったか…」

ダイキ「お前がそこまで考える事じゃねぇ。そもそも、ここで倒しておかなきゃもっと被害は増えていたはずだ」

カブトマン「そうだ。それに、この時代に黒の強液がどのようにして持ち運ばれたのかが問題だ。また別件で調査をしなきゃならん訳だ」

そしてダイキとカブトマンはキウシに後を任せる感じになった。

ダイキ「兄ちゃんへのA案件の報告は俺達でやっとくから、キウシは新隊員達を無事にこっちに連れて帰ってこいよ」

カブトマン「書類なども全部やっとくから、任せとけ」

キウシ「…すまない、2人とも」

そうしてダイキとカブトマンはワープしてキウシの目の前から消えた。

 

つづく