みちのく旅行記

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オリジナル物語「時空警備隊」 第8話

 

第8話

 

キウシ「なあ、お前ら警備兵は、あのハルスという奴に忠誠を誓っているんか?」

キウシの話した質問にアランとミカンはポカンとしていた。

「…どういう意味だ」

キウシ「お前ら警備兵の話や行動を聞いてて思ったんだ。ミリアを捕らえたにしては、お前達はただ警備してるだけの存在。それ以上の何かがあるって訳では無さそうだし、仕事だからやってるみたいな感じにしか思えなくてな」

キウシはミカンから聞いた警備兵の話や、実際の行動を見た感じとして、王国の警備兵にしては忠誠心が欠けてると思ったのだ。

もし忠誠心があるのに国民に対しての態度や言葉が酷くて、それが上に伝われば自分に対しての罰は逃れられない。

しかしそれが日常化してるとするならば、王に対しての忠誠心が無い事を表してるとキウシは考えたのだ。

「忠誠なんて誓ってねえ、俺達は平和であればそれで良いんだよ」

アラン「それってどういう事よ?」

警備兵の話によると、常に内紛や派閥の争いにより、安定した生活と平和があればそれで良いという考えだった。

そしてハルス王国が建国され、これ以上平和が崩れぬようにと警備兵になり、下手に逆らわないように立ち振る舞っていたという。

キウシ「なるほどな。それは貴重な情報だ」

そしてキウシは納得したのか、催眠術をかけて気絶した警備兵と共に人気のない場所に隠した。

キウシ「どうやらハルスという人物は、ただ武功が強いというだけで、国の統治をする気はさらさら無いみたいだな」

ミカン「キウシ、何か分かったの?」

キウシ「さっきの警備兵の話を聞いて、俺の中で引っかかっていた謎が少し解けたんだ」

キウシはこの時代に来てから、王国が建国されたにも関わらず、下町の状況が酷い事に目をつけていた。

内戦や派閥争いが絶え間なく続いて、その中で王国を建国する必要があるのかと、そしてそのしわ寄せを国民に向ける理由。

そしてキウシの謎としていたのは、警備兵の話による忠誠心の話だった。

今いる警備兵がただ平和であるのを守るだけで、王の事を気にしてないのであれば、忠誠心がない事になる。

それは城内に侵入しても、大した抵抗もない事を意味する。

キウシ「忠誠心があるなら、警備兵は意地になっても王を守る為に命を張るだろうが、さっきのミカンが怒鳴って俺が拘束してただけでペラペラ喋るくらいの警備兵だ。大きな脅しさえかければ、戦闘を避けて救出する事が出来る可能性がある」

ミカン「でも、私達だけで出来るの?」

アラン「私が言うのもあれだけど、3人だけでホントに救出出来るのかしら?」

キウシ「んー…せめてもう1人仲間がいたらなぁ…」

キウシ達が城への潜入に考えを重ねてた時、キウシはふと何かの気配を感じで身構えた。

アランとミカンは突然のキウシの行動に驚く。

キウシ「そこにいるのは誰だ、出てこい」

キウシが言い放った先から、姿を隠す為か、マントとフードを被ってる見知らぬポケモンが現れた。

アラン「あなた、何者なの?」

アランも警戒して刀に手をかける。

???「驚かせて申し訳ありません。自分に敵意はありませんので、お話を聞いて頂けないでしょうか?」

そう言ってフードを取る謎のポケモン

一見エーフィのようにも見えたが、色も紫で頭に月のような模様があった。尻尾も短く、キウシ達が知るポケモンではなかった。

ミカン「あなたのその見た目、イーブイからの派生…?」

???「はい、自分も元々はイーブイです。色々あってこのような姿になっておりますが」

そして改まった感じになって謎のポケモンはキウシ達に話す。

ムーン「私の名は「ムーンライト・オーブ」、ムーンとお呼び下さい」

キウシ「自己紹介は良いとして、俺達に何か用があるのか?」

ムーン「はい。あなた方にお願いがあってここに来ました」

アラン「お願いですって?」

ムーン「ミリアお嬢様の、救出を手伝って頂けないでしょうか?」

その言葉を聞いていち早く反応したのはミカンだった。

ミカン「ミリアの事知ってるの?!」

ムーン「はい。私はミリアお嬢様にお仕えしていたポケモンのようなものです。そしてあなた方にお声かけしたのは、先程警備兵を捕まえて情報を聞き出しておられましたよね?」

キウシ「なるほど、遠目からそれを見ていたのか」

ムーン「そうです。内容までは聞けませんでしたが、もしミリアお嬢様の居場所が分かる情報を手に入れたのであれば、それを提供して頂きたいです。そして願わくば、救出を手伝って頂きたいのです」

キウシはしばらく考えた後に、こう話す。

キウシ「このハルス王国と言い、警備兵といい、そして君といい、何故そこまでミリアにこだわるんだ。ミリアという人物は何者なんだ?」

ムーン「……」

アラン「それだけじゃないわ。あなた、今の感じだとハルス王国がミリアを捕らえた理由まで知ってそうじゃない」

ムーン「……」

ムーンは黙り込んだままだった。

そんな話をする中で、ミカンはムーンに歩み寄る。

ミカン「ムーンさん、私は1度ミリアに命を救われました。だから、私も助けたい思いは一緒です」

ミカンのまっすぐな瞳にムーンは閉ざしてた口を開く。

ムーン「知ってます。あなたがミリアお嬢様と警備兵に囲まれて、魔法で逃がしてもらえたのですよね」

ミカン「え?!まさか…見てたの?」

ムーン「自分もミリアお嬢様の猛獣達と同様に殺傷の対象でしたから。あの場を助けたくても助けられない状況でした。だからこそ、今ミリアお嬢様を救わなければならないのです」

ミカン「…なら、話してほしいの。あなたの知ってる全てを」

ムーン「…分かりました、お話します」

 

「そもそも現在のハルス王国の王、ハルス王…いえ、ハルス様はミリア様と腹違いの兄妹だったのです。幼少期の頃から御二方は仲良くしており、ハルス様は昔から猛々しい方ではありましたが、とても正義感のお強い方でした。ミリアお嬢様もその正義感に惹かれており、まさに御二方は将来素晴らしい方々になられると思っておりました。ちなみに私は、イーブイの頃にミリアお嬢様に拾われて、気づけばこのような姿に進化しておりました。進化した姿にミリアお嬢様はとても喜んでおられました。しかし、私が進化してからハルス様の様子が変わられ、権力闘争が本格的に始まると、ハルス様は様々な猛者達を集め、殺戮を繰り返していきました。やがて、世間からはハルス派と呼ばれ、さらには王国を立ち上げるという暴挙に出ました。しかし、権力闘争により疲弊しきった国はもはやハルス王国に頼る以外なく、貧困生活の代わりに平和という治安を維持してもらう事で高い税金を巻き上げるような事になっていったのです。なので警備兵は、忠誠心より金目当てとして集まった集団みたいなものなのです」

 

話を聞いてたキウシ達は、話のスケールが大きすぎて理解に苦しんでた。

ミカン「えっと、つまり…ハルスとミリアは兄妹だから、ハルスはミリアを捕まえたって事?」

アラン「ミカン、なんか言葉がおかしくなってるわよ」

キウシ「ミリアとハルスが兄妹なのは分かった。だが、それだとわざわざ捕らえた意味が理解出来ない。ミカンからも話は聞いたが、ハルスがミリアに部下として働きかけるように命令したとも言われているが、その辺は何か知ってるのか?」

ムーン「…あまり、良くない話ではありますが、聞きますか?」

アラン「構わないわ、話してちょうだい」

ムーン「今のハルス王は、王国の基盤を整える為に、ミリアお嬢様を女王として迎え入れる計画らしいです。さらに言うと、その血統を絶やさないようにするのも目的であると…」

ミカン「え、でもそれって…」

キウシ「昔に正義感溢れてたなんて思えない行動だな。まさか、近親相姦で血統を絶やさずにいくつもりか」

ムーン「ご推察の通りです…」

アラン「馬鹿げてるわ。ポケモンの世界ならそんなのはあっても変ではないけど、人間の世界では馬鹿げてる事でしょ?」

ムーン「私も何故ハルス王があのような考えに至ったのかが分かりません。おそらくミリアお嬢様も、ハルス王の異変に困惑してると思います」

まさにハルス王は世間から言われていた暴虐の暴君と罵られているほどに残酷であった。

しかしキウシは冷静にその状況を分析し、ハルスの変化が気になっていた。

キウシ (いくらハルス王が暴君とはいえ、流石に血統を兄妹で繋ぐ事を考えるか?もし血統を続かせるなら、兄妹に限らず大勢の女性を拉致すると俺は考えるが、それをしないのは何故?それにムーンの言ってた幼少期の頃のハルスは正義感に溢れていると言ってる。全く別のイメージに塗り変わるような事が権力闘争で起きたのか?)

どうしてもハルス王の変化に納得してないキウシは、ムーンに尋ねる。

キウシ「ムーン、ハルスの様子が変わったのは、確かムーンが進化してからだと言ってたな?」

ムーン「はい、そうです」

キウシ「その時に何かハルスがやってた事とかあったか?」

ムーンはしばらく考える。

ムーン「そういえば、村人の助けをしてくると言ってどこかへ行ってました。今思うと、それから帰ってきた時には既に様子がおかしかったですね…」

キウシ「その村人にはミリアとムーンは会ってないんだな?」

ムーン「はい、会っておりません」

そして再びキウシは考える。

キウシ (そうなると、その村人との間に何かあったと考えるべきだが、正義感が強かったハルスが豹変するほどの出来事など普通ではありえない。ありえるとすると…)

するとキウシは端末を取り出して、時空警備隊の本部と通信を試みる。

 

2700年、スバルのデスクに置いてある通信機が作動する。

スバル「こちらスバル、誰だ?」

キウシ「スバル、キウシだ。今いいか?」

突然キウシからの連絡にびっくりしたスバルだが、それと同時に無事だった事にホッとしていた。

スバル「キウシか。良かった、無事だったんだな」

キウシ「まあ無事ではある。それより至急応援部隊をこちらに向かわせてほしい」

突然の内容にスバルは困惑する。

スバル「なんだ?緊急事態か?」

キウシ「そうではないが、A案件の事態が起きてる可能性がある」

キウシが言ったA案件とは、自分の直面している危険度を表している。

そしてAとは別の時代の干渉がある可能性と、命の危険を伴う可能性を表している。

キウシ「詳しく話をしてる時間はないが、とにかく人をこちらに向かわせてほしい。ワープの補正用の資料として、先程現地にいた人の話を録音してあるから、それを元にタイムホールを修正してこちらに向かわせてほしい」

録音した人というのはまさにムーンの話だった。

時空警備隊がタイムホールを作る際には基本的に今ある歴史の情報を元にしてタイムホールの発生を修正したりする。

これをしないとタイムホールが安定せず、第3話のように情報がないままタイムホールを形成すると嵐のようなタイムホールになってしまい、場合によっては狙った時代に行けないのである。

しかし、キウシがムーンから聞いた時代の情報を使いタイムホールを修正する事によって、その時代に行き来するのが容易になる。

そして録音の音声を受け取ったスバルはキウシの要求に対して即座に行動した。

スバル「分かった。直ちに調査に向かってるダイキとカブトマンを呼び戻して、そっちに送り込む」

キウシ「すまない、助かる」

そうして無線は途切れ、スバルは即座に調査部に向かう。

調査部に着くなり、スバルは早速命令する。

スバル「みんなすまない。今すぐ調査を中断して、キウシから送られてきた録音のデータからタイムホールの形成を行ってくれ。それと、調査中のダイキとカブトマンを呼び戻してくれ」

突然の命令にみんなは驚くが、すぐさま行動に取りかかった。

ココ「やっとキウシから連絡あったと思ったら、いきなりタイムホールの形成か。もしかしてA案件か?」

スバル「そうだ。とはいえ、今回は未来だ。タイムホールの形成が上手くいくか分からないが、キウシがA案件を宣言した以上はこちらも対応する」

田代マン「だったら、とりあえずこの書類はこのままにしておくぞ。ココ、こっちも形成に手を貸すぞ」

ココと田代マンも調査隊に加わってタイムホールの形成を手助けする。

 

2900年、スバルとの通信を終えたキウシは、アラン達に重要な事を話す。

キウシ「今から話す事は重要な事だから、よく聞いてくれ」

一呼吸してキウシは話し続ける。

キウシ「今回のミリアの件には別の時代からの干渉がある可能性がある。そして、深くは言えないが、こちら側のルール上はそういうのに関わっていいのは今のところ俺だけだ。アランとミカン、ムーンは今後一切ミリアの件に関わらないようにしてくれ」

突然の話を突きつけられて、3人はびっくりするが、やはり突然こんな事を言われても反発を食らうだけだった。

ミカン「ちょっと待ってよキウシ!そんな急に言われても困るわ!」

ムーン「自分も同じです。そんな簡単にミリアお嬢様の事を諦める訳にはいきません!」

キウシは予想通りの反発に頭を悩ませるが、だったらと話す。

キウシ「今回は警備兵だけの話には留まらない。もしミリアを救いたいと言うなら、ここで時空警備隊に入ってほしい」

アラン「じ…時空警備隊…?」

ミカン「な、何それ?」

キウシは時間もないからざっくりと時空警備隊の事を説明し、今回のミリアの件で別の時代が干渉してる事から、通常の人がそういう事に触れてしまう事を阻止しなければいけないルールがある事を話す。

キウシ「つまり、時空警備隊の隊員としてなら干渉しても問題はない。俺は元々仲間を作る為にここに来たのもあるから、今なら3人とも時空警備隊として登用する権限も俺が持ってるし、ミリアを救う事が出来る。但し、1度時空警備隊に入ってしまうと、基本的に自分らの時代に留まる事は出来なくなる。だからよく考えてほしい」

その話を聞いた3人は、納得いかない表情をしながらも、深く考えていた。

そして先に答えが出たのはミカンだった。

ミカン「私は入るわ。この時代に未練とかも無いし、ミリアを救い出す為だもの」

ムーン「自分も同意見です。ミリアお嬢様の為なら手段は選びません」

キウシ「…再度聞くぞ、命を伴う仕事もある。それでも良いのか?」

ミカンとムーンは即答で首を縦に振った。

そして、キウシはこの2人は即答すると分かっていたが、アランは3400年の事もあるから時間がかかるだろうと思っていたが、その考えは浅はかだった。

アラン「私も行くわ。ミカンは行くのに私が行かないなんて出来ないし、大切な家族で妹のような存在だもの。放っておけないわ」

ミカン「…お姉ちゃん…」

アラン「やっとそうやって呼んでくれたわね」

アランがミカンの頭を撫でる。

キウシ「なら3人とも、全てを捨てても命をかけるって事で良いんだな?」

その言葉を聞いて3人とも頷く。

 

つづく