みちのく旅行記

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オリジナル物語「時空警備隊」 第9話

 

第9話

 

3人の決意を受け取ったキウシは、自分のポケットから太いリングのような物を取り出し、それを3人に配る。

キウシ「それは時空警備隊の隊員である事を示すリングだ。真ん中を引っ張ると2つに分かれるから、それを好きな方の腕に付けてくれ。ただし、1度付けたら死ぬまで外れないから、要注意だぞ」

3人はそれぞれ利き腕じゃない腕にリングを取り付ける。

すると、何か刺されたような感覚が走る。

アラン「痛っ!」

ミカン「何これ?!」

キウシ「安心しろ。小さい針が刺さって、それで自分らの血液を端末に認識させるんだ。最初の登録の時だけ必要だから、それ以降は針が刺さる事はない」

そしてしばらくするとリングが光る。

「時空警備隊へ登録します。お名前を入力して下さい」

リングから声が聞こえてきて、それぞれの目の前に入力画面が現れる。

アラン「何これ…画期的ね」

キウシ「時空警備隊ではこれが普通だ。早めに登録した方がいい、向こうも登録するので忙しくなるからな」

そしてそれぞれ名前を入力していくが、ミカンだけは何故か手が止まっていた。

ムーン「ミカンさん?」

アラン「どうしたの?」

キウシはふと思った時に、ミカンだけ他の2人と違ってしっかりとした名前が無い事に気づく。

ミカン「……」

そんな固まったミカンを見かねて、キウシは声をかける。

キウシ「ミカン、ミリアを救った後はどうしたい?」

ミカン「え?」

キウシ「今は目の前の目的として、ミリアを救い出す事だが、その後はどうしたい」

ミカン「その後……」

ミカンはしばらく考えた後、こう答えた。

ミカン「…私は、みんなを守りたい。守ってもらうだけじゃなくて、私もみんなのように誰かを守りたい。ミリアもキウシもアランも、そしてムーンさんも」

アラン「ミカン…」

ムーン「ミカンさん…」

その時だった。ミカンの体が突然光出したのだ。

突発的な事だったのでキウシも驚く。

そしてミカンの体が変化していき、光が収まった時には、なんとミカンはイーブイの姿からリーフィアに進化していた。

ミカン「え、今何が…?」

アラン「み、ミカン!あなた進化したのよ!」

ミカン「え??」

ミカンは自分の手を見つめる。するといつものイーブイのような茶色の姿でない事に気づく。

キウシ「驚いたな…まさかこのタイミングでリーフィアに進化するとは」

ムーン「しかも、こんな何もない場所でリーフィアに進化するという事は、何かの作用が働いたのでしょうか?」

アラン「…きっとそれは、ミカンだからじゃない?ミカンという果実は木から出来ているから、それが反応したのかしらね?」

ミカン「リーフィア…」

自分の姿に信じられないミカンだが、アランがここで閃く。

アラン「そうよ、これだわ!「リーフ・ミカン」、これが名前でどうかしら?」

キウシ「確かに、違和感もないし俺も良いと思うぞ」

ムーン「自分も良いと思います」

ミカン「リーフ…ミカン…」

ミカンはしばらく考えると?

ミカン「うん、それにする!私はリーフ・ミカン、みんなを守るわ!」

 

2700年、スバル達がダイキとカブトマンの送り込みの準備を行ってる時だった。

コンピューターを操作してた捜査員から報告が入る。

「スバルさん!新たな隊員登録の通信を受信しました!」

スバル「もしかして、キウシのやつ…向こうで戦力を増やしていたのか」

「登録情報は3つ、1人目は「アラン・ラングレイ」、2人目は「ムーンライト・オーブ」、3人目は「リーフ・ミカン」です!」

スバル「直ちにその3人の隊員登録を進めろ!そして引き続き2900年へのタイムホールの修正作業も進めろ!」

 

2900年、時空警備隊の新隊員となった3人を加えたキウシは、早速ハルス王がいる城へと向かっていた。

城の規模はそこまで大きくなく、警備兵は多く点在しているが、キウシはVYモードでアラン達とまとめて空路から侵入した。

警備兵の配置から見ても、空に対して警戒していなかった事が、侵入を容易にしたのだ。

そして、ムーンが城の構造を事前に偵察していた事もあって、ミリアが囚われている地下牢の場所も検討がついてたのだった。

そして地下牢の入口と思われる近くに身を潜めていたキウシ達。

ムーン「おそらくあそこが地下牢の入口です」

キウシ「その割には警備兵の数が少ないな…」

その入口の近くに警備兵は3人しかおらず、重要な人物を捕らえているにしては警備の数が少なかった。

ムーン「内部にも警備兵は居ると思いますが、おそらく数は少ないかと」

アラン「ガバガバじゃない…警備兵の意味あるのかしら?」

ミカン「もしかして、それだけ警備兵の数が少ないの?」

キウシ「少ないというより…多く出来ないんじゃないか?さっきの警備兵に忠誠心がなかったように、城を本気で守ろうだなんて思う兵士が少ないんだと思う。だからほとんどは街に出払っているんじゃないか?」

アラン「だとしたら、私達には好都合ね。3人なら私とキウシとムーンで行けるわよね?」

ムーン「お任せ下さい」

キウシ「よし、なら真ん中のやつは俺がやる。アランは左、ムーンは右だ。俺が先に仕掛けるから、それに続いてくれ」

ミカン「キウシ、私はどうする?」

キウシ「ミカンはまだ進化したばかりで体も慣れてないだろ?戦闘は避けて、俺達に付いてきてくれ」

ミカン「分かった」

そしてキウシが空から入口に向かって飛んで、アランとムーンは物陰に隠れながら入口に近づく。

 

「それにしても、こんな場所の警備なんて意味あんのか?」

「あの女の為に警備が6人って、地下牢に閉じ込めているのにいらねえと思うが」

「だいたい、あの女しか地下牢にいないのに、地下牢の意味ないよな?それこそ町外れの牢獄に入れた方が良かったんじゃね?」

警備兵達の会話を空からこっそり聞いてたキウシ。

キウシ「大事な内容をペラペラ喋るようじゃ、警備兵失格だな」

そして空から警備兵の1人に飛びかかり、得意の電気技を食らわせる。

それを食らった警備兵は悲鳴を上げ、しばらくしてその場に倒れた。

キウシ「安心しろ、気絶する程度に電撃を食らわせたくらいだ」

「こ、こいつ、どこから?!」

「おい!さっさと殺せ!!」

残りの警備兵もキウシに遅いかかろうとするが、アランとムーンが既に背後にいた。

アラン「殺すのは厳禁なのよね。なら鞘のままこうすれば!」

アランは鞘に入ったままの刀を警備兵の首元に直撃させ、そのまま警備兵は倒れ込む。

ムーン「神速!」

高速でムーンは警備兵の背後に回り込み、峰打ちを食らわせる。そしてその警備兵のそのまま倒れ込む。

キウシ「2人とも、よくやったぞ」

アラン「殺さずやるのが難しいわね、鞘があったままだと重いし」

ムーン「自分は元々殺すのは苦手で、峰打ちを極めていたから良かったですが…」

そしてミカンも走ってきて合流する。

ミカン「お待たせ!」

全員が合流した中で、地下牢の入口には鉄格子の扉が付いていた。

ムーン「どうやって開けますか?」

キウシ「俺に任せろ」

キウシはネクタイを取り出すと、そのまま力を込めて一振した。

そして鉄格子はあっけなく切れてしまう。

アラン「私の時にも思ったけど、その武器はほんとに強力な武器よね」

キウシ「ギガソードでも良いかと思ったんだが、切れ味を重視するならネクタイソードの方が良さそうなんだ。しかも力をそこまで加える必要もないしな」

そしてキウシはさっき警備兵が話してた内容を全員に伝える。

アラン「捕らえられてるのがミリアだけって不自然ね」

ムーン「それに警備兵があと3人しかいないとは…」

ミカン「なんか、守りが薄いように見えて、逆に不気味な気がする」

キウシ「ミカンの言う事がもっともだ。ハルスは何か別の事を企んでいそうな気がする」

そのまま4人は地下牢の方へと入っていった。

 

階段を降りると、早速警備兵が3人待ち構えいたが、キウシの電気技に為す術なく倒れ込んだ。

そして道はいくつかに分かれていた。

キウシ「時間勝負だ、すぐに見つけ出すぞ。ミカンは俺の傍を離れずに、他の2人は分散して探すんだ」

そう聞くとそのままアランとムーンは別の道へ入っていき、キウシとミカンはそのまま真っ直ぐ進んだ。

走りながらも全然見当たらない事に焦りを感じたミカンは叫んだ。

ミカン「ミリアァァァァ!!!!」

 

私はどうしてこんな目に遭ってるのだろう。

気づいたら私は鉄格子の中に入っていたのだ。

魔法を使われる恐れかあるせいか、後ろで手は縛られたままで、私は地べたに座ってただ過ごすしかなかった。

服も全部奪われて、今着ているのは奴隷服みたいなもの。

使いの猛獣達も警備兵に殺され、唯一救えたのはミカンだけ。

そして、私には分からない。ハルスが何を考えてるのか。

昔のハルスはあんな事をする人じゃなかった。

しかし、いざ城に赴いてみたら、「我の女王となり、子孫繁栄に努めよ」と、ありえない事を口走っていた。

そんなの絶対嫌に決まってるから逃げ出したのに、今やこのザマ。

もうどうにでもなれって感じだけど、私が逃がしたミカンは警備兵に捕まらずに逃げ切ったかしら?

あの時食べた蜜柑は本当に美味しかったわ。

私はこんな目にあってるけど、せめてミカンには幸せな生活を送っててほしい。

ただ…もう一度だけミカンの声が聞きたいと思ったわ。

「ミカン……」

そう呟いた時だった。

ミカン「ミリアァァァァ!!!!」

私は突然名前を呼ばれた事にびっくりした。

そして、その声に聞き覚えがある事にも。

そして鉄格子の向こうから、リーフィアの姿をした子が現れた。

ミカン「ミリア!!やっと見つけた!!」

 

ミカンが叫んでそのまま走り出したその先に、なんとミリアが居たのである。

ミカン「ミリア!!やっと見つけた!!」

ミリア「えっ…リーフィア…?」

ミカン「私だよ!ミカンだよ!」

ミリアはハッとしたように、立ち上がって鉄格子に近づいてくる。

ミリア「ミカンなの?!本当に?!!」

ミカン「うん!!!」

鉄格子に隔てられながらも、互いの存在を確認し合った2人。

そしてすぐにキウシも駆けつけてくる。

キウシ「ミカン!見つけたか?!」

ミカン「うん!ここよ!!」

キウシも到着すると、すぐにネクタイソードを構える。

キウシ「ミリアさん、壁まで下がって!」

ミリアはそう聞くと、すぐに後ろの壁まで下がる。

そして入口と同様にネクタイソードで鉄格子を木っ端微塵にする。

そしてミカンはそのまま中に入っていき、ミリアに抱きつく。

ミカン「ミリア!ミリア!!」

ミカンはくしゃくしゃに泣いていた。やっと会えた再会を喜びが爆発して、そのあまりか泣いてしまったのだ。

そして抱きつかれていたミリアも不意に泣いていた。

ミリア「ミカン…良かった…無事で…」

キウシはすぐにミリアの手に縛られたロープを切り、自分の上着をミリアに着せる。

すぐにアランとムーンも駆けつけ、いよいよ5人になった。

キウシ「よし、感動してるところ悪いが、ミカンとアランはミリアさんを連れてすぐ外へ出るんだ。俺とムーンはハルス王のいる場所へ突撃する」

ミカン「なんで?私も行くよ!」

アラン「そうよ!2人だけじゃ危険でしょ!」

そして反対したのはミカンとアランだけではなかった。

ミリア「私も行くわ」

キウシ「ミリアさん…ムーンから事情は聞いてます。ハルス王と腹違いの兄妹という事も。しかし今のハルス王は危険です、2人と一緒に外へ退避をして下さい」

ミリア「いいえ、ハルスに一発ぶん殴ってやらないと、私の気も済まないし、身内を止めるのも私の責務よ」

キウシはミリアの決意は変わらないと思い、アラン達にも話したように別の時代が絡む案件であり、どうしてもと言うなら時空警備隊に入隊してもらう事を話す。

ミリア「いいわ、どのみちこれが終わっても生きてる意味がないもの。ミカンと一緒ならどこでも行くわ」

キウシはそう聞くと、アラン達にも渡したリングの端末を付けてもらう。

キウシ「命を伴う任務もあります。本当に良いのですね?」

ミリア「無論よ!」

そしてミリアも時空警備隊の隊員となったのだった。

ミリア「改めて、私は「ロワール・ミリア」よ。今後は遠慮なく呼び捨てで構わないわ」

意気揚々としているミリアだったが、キウシは別の事を考えていた。

キウシ (スバルは今頃また1人増えて大忙しだろうなぁ……)

そう考えながら、気持ちを切り替えて命令する。

キウシ「なら全員、このままハルスの所へ突撃する。俺とアランとムーンで前衛、ミリアとミカンは俺達の後ろをついてきてくれ」

そしてそのままキウシ達は地下牢から城内へと侵入していった。

 

つづく