みちのく旅行記

みちのくです!仕事の休暇はよく旅してます!

newカシオンと北星の物語 第5話

札幌駅で北星と合流を果たした僕と北星。

しかし僕の視界に北星によく似た人がこちらを見ている事に気づく。

そしてしばらくするとその人は僕らの方に向かって来た。

北星「あ、お母さん!この人が私の友達のカシオンだよ!」

お母さん…そうか、この人はあの時の電話で最初に出た北星のお母さんか、本当に北星とよく似ている人だ…。

北星の母「北星がいつもお世話になってます、北星の母です」

北星のお母さんは僕に対して頭を下げる。

カシオン「い、いやいや!頭をあげてください、僕そんな偉い人じゃないので!」

北星「そうよお母さん、カシオンも困ってるじゃない」

北星の母「あはは、これは失礼しました」

カシオン「えっと、僕はカシオンです。出身は仙台で、今日は北星に会いに来ました」

北星の母「わざわざご丁寧にどうも」

ニッコリと北星のお母さんは笑って僕に挨拶してくれてる。

 

それからしばらく札幌駅のカフェでゆっくりしながら3人で話していた。

北星のお母さんは北星を札幌駅に送り届けるついでに僕がどんな人なのかを見たくて一緒に着いてきたというのも分かった。

こんなお母さんなら僕のお母さんに会わせても仲良くなれそうだ。

北星「そうだカシオン、今日はどこかに行くの?」

カシオン「うーん…正直何するか決めて無かった…」

北星に会う事を第一に考えてたからどこで遊ぶのかも全く決めていなかった。

北星の母「それなら北星、せっかくカシオンさんが来てくれたんだし家に来てもらって遊んだらどうかしら?お父さんも仕事でいないからたっぷり遊べるだろうし」

北星「あ、それいいね!」

え、ちょっと待って下さいお母さん。いくら北星の友達だとしてもいきなり家にご招待するのってどうなのですか()と言うより、それって北星の部屋とかに入る事になりますよね、それは男としてもどうかと…。

そんなボソボソ考えていたらいつの間にか家に行く事で決定してしまい、僕ら3人はカフェを後にして北星のお母さんの車に乗せられて札幌市内のどこかへ連れて行かれる。

車の窓からは札幌では有名なテレビ塔や時計台も見えたり、あちこちに札幌ラーメンのお店がある。

そしてすすきのを過ぎてしばらくした場所のある一軒家に車が止まる。

北星の母「ここが私達のお家よ。北星、先に出て家の鍵を開けてきて!」

北星「はーい!」

北星はそのまま車から出て家の扉に向かって走っていく。僕もとりあえず車を降りて、北星のお母さんが車を駐車して来るのを待っていた。

北星の母「あら、そこで待っていなくても良かったのに」

カシオン「いえ…お先に家にお邪魔してしまうのは失礼かと思いまして…」

北星の母「あらあら、本当にしっかりしてるわね。じゃあ上がってもいいわよ」

カシオン「はい、お邪魔します」

北星のお母さんと僕はそのまま家の中に入っていく。

 よく考えたら、玄関の2重になった扉はとても珍しいなと後で思ったのだった。

 

 家のリビングを見るととても綺麗だった、多分毎日掃除されてるんだなと一瞬思った。その証拠に自動掃除機のRoombaが足元を掃除していた、一瞬踏んづけてしまうところだったが。

 カシオン「おぉ…これは珍しい物がありますね」

 北星の母「いつもなかなかお掃除とかしないから、とりあえずこれに任せておこうと思ってね」

 そして北星は2階からドタドタと降りてきた。

 北星「カシオン!早速何して遊ぶ!?」

 カシオン「北星、気が早いよ…」

 

あれから2時間くらいだろうか、僕は北星といろいろ遊んでた。時計を見たらもう午後の2時になってる。

今日は札幌駅近くのホテルで泊まる予定だが、天候の事を考えれ午後の4時までにはこの家を出たいところだが…。

北星「ねえお母さん、お父さんって何時くらいに帰ってくるのかな?」

北星の母「そうねぇ…多分15時頃には帰って来ると思うかしら」

北星「えぇ…じゃあそろそろカシオンと外に出た方がいいかな…」

カシオン「?」

自分は北星達が言ってる事がいまいち理解出来ていない。

よく父親か母親がいると家では遊べないというのがあるが、北星達の様子を見てるとどうやらそれ以外にも理由があるみたいだ。

何にせよ、あまり家でお邪魔するのも悪いと思って自分がそろそろ帰ろうと伝えようとした時、玄関から物音が聞こえてきた。

 「ただいま〜」

 玄関から声が聞こえてくる、その瞬間目の前にいた北星と北星のお母さんが慌てた様子になる。

「「?!」」

二人して突然顔色を変えた。

北星の母「まずいわ、お父さん帰って来ちゃった!」

北星「えぇ?!どどどどうしよう!?」

さっきの楽しい雰囲気から突然の豹変、そんなに父親が厳しい人なのだろうか?

そして北星が思わぬ行動に出る。

北星「お母さん!ちょっとそこの冷蔵庫使うわよ!カシオン、この中に入って!!!」

カシオン「は?!ちょっ…これ業務用の冷蔵庫だって!!」

北星「いいから入って!!」

そう言われて僕は北星に蹴飛ばされて冷蔵庫に入れられ閉じ込められた。

中は真っ暗で寒い、さらに人がギリギリ入れる幅しかなく辺りには何やら缶のような物が置いてあるのが分かる。多分お酒だとは思うが…。

 

北星「あ、お父さんお帰りなさい」

北星の父「なんだ、北星も帰ってたのか」

北星の母「あなた、おかえりなさい」

北星の父親、僕らが結婚した後も何度か様子を見に来てくれるとても親切な人だ。はまなすの面倒も見てくれたりといろいろ助けてもらってたりする。でもこの時はまだ北星に対して不信感を持っていたらしい。それもそのはず、この時の北星はなんと不登校だったからである。

北星の父「おうただいま。ところで玄関に見知らぬ靴が置いてあったが、誰かいるのか?」

北星の母「え?あー、私の友人がちょっと来てるのよ、今はトイレだけど」

北星「そうだったの?」

北星の父「ならいいが、とりあえず酒でも飲むか」

外の会話は聞こえるが、それ以上にこの入れられた冷蔵庫が強力すぎて本当に凍えてしまいそうだった。何とか出ようとしてるが外からロックされていて出られない。意識も薄れてきてそろそろやばい。

北星の父「あれ…こっちの冷蔵庫は切らしてたか。仕方ない、そっちから取るか」

そしてこちらに近づいてくる音が聞こえてくる、まさか…。

「「あ’’っ!!!」」

そして突然として僕の目の前は明るくなり、しかし意識が朦朧(もうろう)としていた為そのまま倒れてしまった。

北星の父「うわっ?!誰だこいつ!?」

北星「あちゃー…」

北星は頭を抱えてジッとしていた。

 

しばらくして自分は目を覚ました。そこには北星とその両親二人が僕を見ていた。

カシオン「…あれ、ここは…」

北星「ごめんねカシオン…突然冷蔵庫なんかに入れたりして…」

北星の父「てかわざわざ冷蔵庫にまで隠れる事はないだろ、そこまでコソコソして隠す理由が分からん」

自分はどうやら冷蔵庫でそのまま倒れて気づいたらベッドに運んでくれたらしい。

北星の母「まあまあ…北星だってカシオンさんと会ってる事をあなたに知られたくなかったのよ」

北星の父「だからコソコソするからダメなんだよ。堂々としていれば俺は何も言わない、第一普通に客人を追い払ったりする訳ないだろ」

北星はやや落ち込んだ表情になってるが、もしかしたら自分が倒れてる時に父親に叱られたのかもしれない。

北星の父「カシオン君、君の事は女房から話は聞いていた。北星の父だ、娘が失礼な事をしてすまなかったな」

カシオン「あ…いえ、自分はただ何が何だかよく分からなかったので…」

この時の印象として怖いイメージもあったが、物分りが良くてとても丁寧な人だと思った。ベッドに運んでこれたのも北星の父だったらしいので。

そして北星の母親はわざわざ暖かい飲み物まで用意してくれた。

カシオン「あ、ありがとうございます…」

それは甘くて濃厚なミルクセーキだった、これを飲んだおかげでだいぶ調子を取り戻せた。

 

しばらくして北星は部屋に戻って僕と北星の両親だけで話をする事になった。

北星の父「せっかく遊びに来てくれたのにすまないな、ちょっと話しておきたい事があったんでな」

カシオン「話ですか?」

北星の母「えぇ、北星の事についてね」

そこで僕は初めて知らされた、北星が学校に行かず不登校になってると言う事。

そのきっかけは小さい頃のいじめが絡んでると言うが、北星の父親はそうではないらしいと言っている。

北星の父「元々からあんな性格なんだ。やりたい事にはとことんやり込むし、嫌いな事からはすぐ逃げようとする。でも爺様や婆様は甘くてね…北星の好きにやらせていいって言ってるのさ」

北星の母「私たちが正さなきゃいけない事はもちろんの事なんだけど、どの方法をとってもなかなか上手くいかないのよね…」

カシオン「でも…北星はよく北斗星に乗ってますよね?あれは一体…」 

北星の父「あぁ、それは爺様達に会いに行ってるからだろうな」

北星の母「私達のおじい様は東京と福島にいるんだけど、北星はよく東京のおじい様に会いに行くのよ、それも平日や休日問わずね」

カシオン「だからあんなに北斗星に乗ってたのですね。でも、北星と最初に会った時は仙台から乗って来ましたけど…あれはどうしてでしょう?確か北斗星は福島にも停車したはず…」

北星の父「簡単な話だ。寝坊して福島からは乗れなかったんで新幹線で仙台に先回りしてギリギリ追いついたと言う感じだ」

北星の母「でもまさかその時にカシオンさんと出会えるとは思ってもいなかったでしょうね」

そこまでして北斗星に乗りたがるのはやはり何か理由があるからだろうか?

北星の父「実際、北星という名前も北斗星から取った名前だからな」

カシオン「そうなのですか?実は自分もカシオペアの名前から取って付けられた名前なのですよ」

北星の母「あら、これは偶然かしらね」

北星の父「まあ、よく電車の名前を自分の子供の名前にする人がいるくらいだしな」

自分はこの時までは案外普通に過ごせると思っていた。でもそれは…北星が加わった事で急変したのだった。

 

はまなすを迎えに行って疲れた体を横たえる。

カシオン「はぁ…疲れた」

はまなす「ただいまー!」

やはり家に北星は帰っていなかった、今日も乗務で帰って来られないのかもしれない。

そろそろ迎えの事も考えて車でも買うべきだろうか、でもそうなれば維持も大変だし…何より三人一緒に鉄道で出かける事が出来なくなる可能性もある。

カシオン「とりあえずご飯を作ろうか」

せっせと台所に向かっていつものように食材を取り出す、はずだったが冷蔵庫を見てみると材料がかなり少なかった。そしてカシオンは買い出し行こうとしていたが疲れてその事を忘れていた事に気づく。

カシオン「しまった…食材買い忘れてた」

はまなす「え?!じゃあ今日ご飯無いの!?」

カシオン「今から行けば間に合わなくもないけど…どうしよう」

そこで偶然にもよくポストとかに入ってるピザ配達のチラシを見つけた。

そしてそのチラシに載ってるピザがあまりにも美味しそうだった。

カシオン「…ピザでも注文する?」

はまなす「ピザ!?するする!!」

目を輝かせるはまなす、そういえば最後にピザを食べたのはかなり前だった。

偶にはこういう時も良いかなと思ってピザの配達を頼んだ。

 

続く!