みちのく旅行記

みちのくです!仕事の休暇はよく旅してます!

newカシオンと北星の物語 第8話

前回のあらすじ…

 

カシオンと北星は謎の食事券を手に入れ、指定の時間まで余裕があるので4号車に向かう事にした。

 

あらすじ終わり。

 

トワイライトエクスプレスの4号車には「サロンデュノール」と言う場所があります。

簡単に言えばサロンカー、もしくは景色を見るための展望車みたいなものです。

中に入ると大豪邸のソファーみたいな物が置いてあり、他の車両よりも窓ガラスが大きくてとても見晴らしが良くて高級感が溢れる車両です。

4号車の隣にある3号車には食堂車があり、食堂車を訪れる人はスイートルームやロイヤルを除いて基本はこの4号車を通る事になる。

カシオンと北星がこの車両に訪れた時は少し人で賑わっていたが、しばらくするとカシオンと北星のみになってしまった。

北星「ここ凄いよね!ソファーがフカフカだよ!」

カシオン「食堂車はこの先みたいだし、時間になるまではここで待っていようか」

北星「うん!」

この時は既に外は暗かったので景色は何も見えなかったが、部屋とは違って広々としてるし何より二人っきりだったので落ち着ける空間だった。

カシオンはこの時ある事に気づく、普通に見てたら気づかなかったがよく見てみると北星の首元に何やら引っ掻き傷の痕と首を絞められたような跡がある事に。普段は厚着とマフラーで首元が見えなかったが、この時はさすがに車内の温度が暖かいので暑かったのかマフラーや上着も部屋に置いてきていた。

最初に聞くのはどうかと思ったが、これ以上北星が隠し事をしていればきっとまた同じような目に合うとカシオンは思っていた。そして勇気を振り絞って北星に訪ねた。

カシオン「北星、その首回りの傷とか跡、どうしたの?」

北星「っ…」

北星はその言葉を聞いた瞬間に顔を伏せてしまった。流石に話すのは無理かと諦めた時に北星が自分の服を掴んできた。

北星「…私が中2の頃に首元を引っ掻かれたのと、首を絞められた跡よ」

北星はすべて正直に話してくれた。

まだ北星が中学2年生の頃に女子のグループにバケツで水をぶっかけられたり、捕まえられて首元を引っ掻かれたり、挙句の果てには首を絞めて窒息寸前まで苦しめていたと言う。

聞くだけでこれはもうイジメの領域を超えていた。悪質すぎてほぼ犯罪に近い状態だった。

北星「これもお父さん達には言ってない、いつも私はマフラーをして隠すようにしてたから。でもやっぱり傷痕とかは残っちゃうのよね…」

自分は聞いてるだけで胸が締め付けられていた、それと同時に自分が何もしてあげられない悔しさに怒りが込み上げてもいた。

そんな辛い状況だったのに北星はよく我慢したと思ってる、むしろ今まで隠し通せたのがすごいくらいだ。でもこの事実を親が知ったら、言わなくても想像しなくても何が起きるのかは検討がつく。

だが自分は列車に乗る前に北星の父親からこう言われていた。

「北星が何か隠してる事をカシオン君が聞いた時、必要だと思った情報だけ俺に教えてくれ」と。

はたしてこの事を伝えたら北星の父親はどんな反応するのだろうか。もし自分が父親なら想像もつかないような怒りが込み上げるはずだ。

北星「それだけじゃないわ…この姿じゃ見えないかもしれないけど、体はもっと目立つ傷があるわ。背中を蹴られたりお腹を殴られたりと酷い目に合ったからね」

闇が深すぎる、そう思った自分は北星が学校を拒絶するのも納得した。これでは学校に行けなくても仕方がない、もしすべてが事実ならきっと北星が通っている学校はとんでもない闇がある学校になる。

中学3年にもなる北星がこんな状態だと勉強どころか、いつか生活にも何か障害が起きてもおかしくない。

北星「…ごめんね、せっかくの雰囲気を台無しにして…」 

カシオン「いや、聞いたのは僕だし…それに僕だって北星がそこまで酷い目に合ってたなんて知らなかったから…」

流石にこれは酷すぎると思って大阪に着いた後、北星の父親にこの事実を報告しようと決意した。

 

暗い話を長々と喋っていたらあっという間に指定の時間が近づいていた。

5号車側から続々とディナーを予約した客がサロンデュノールに入ってくる。

カシオン「僕らもそろそろ行こうか」

北星「うん」

暗い話をした後はとても食事の気分じゃないのはよく分かるが、そんな暗い雰囲気をこの後登場した料理に吹き飛ばされる事になるのだった。

19:20頃になりと食堂車の入り口が開く、そして予約券を見せた客が次々と食堂車に入って行く。

食堂車の扉にはこう書かれてる。

「ダイナープレアデス」

何とも高級感あふれる名前だ、そしてその高級感は名前だけにはとどまらなかった。

 

3号車は食堂車の「ダイナープレアデス」、トワイライトエクスプレスの代表の一つ…ディナー料理が提供される場所である。

特にディナーの食事予約は通常の切符を取るよりも困難と聞いている。それだけ人気が高く、提供される料理が美味しいと評判だからである。

そのお値段はディナーだけで12000円、高いと言えば確かに高いがその料金を使うだけの価値があるからこそディナーは大人気なのだ。

食堂車でディナー料理を提供される時間帯をディナータイムと言って、通常ディナーは17:30から21時までとなっており、それ以外にもディナーの後にパブタイムと言って予約券が無くても利用する事が出来る時間帯がある。もちろんディナーほど豪華ではないが、それでも満足出来る料理が揃っている。

他にも朝食の為のモーニングタイムと言うのもある、こちらは車内で予約する方式なでディナーやパブタイムほどの人気はあまり無いと思うが、時間帯や場所によっては絶景を見ながら食事を楽しむ事が出来る。ディナーやパブタイムでは景色は暗くて見えないからだ。

さらに大阪出発のトワイライトエクスプレスにはランチタイム(昼食)の時間も存在し、札幌出発の場合は14:40から食堂車を利用出来るティータイムも存在する。

※札幌出発や大阪出発が所定よりも遅れた場合、ランチとティータイムの時間の変更もあったらしいが中止まであったどうかは分からない。

 (ここから先の内容の中に食堂車のスタッフが登場しますが、実際の対応は全く違うかもしれません。あくまで物語を盛り上げる為の想像と演出ですのでその点はご了承下さい)

スタッフ「いらっしゃいませ、ご予約券はお持ちでしょうか?」

カシオン「は、はい。これです」

自分も正直この券で食事が食べれるのかは、この時は半信半疑だった。

しかしその後指定された席に座って下さいと言われたので、これはやはり食事の予約券だったんだと後で気づく。

スタッフ「確認しました。二名様のご利用ですのでこちらのお席へどうぞ」

そしてスタッフが案内した席は二人用のテーブル席だった。

北星「えっと…とりあえずこれでさっきのチケットが食事券だったのは間違いないけど、私達これからどうしたら…」

カシオン「何か注文しなきゃいけないのかな…」

スタッフ「本日は食堂車【ダイナープレアデス】、ディナーコースのご予約まことにありがとうございます。初めにお飲物をお伺いいたしますが、本日のオススメにはワインをご用意しておりまして…」

カシオン「あっ…すいません、自分まだ未成年で…」

北星「わ、私も…」

スタッフ「これは失礼いたしました。それではソフトドリンクがございますがこちらはいかがでしょうか?ドリンクの種類はこちらからお選び下さい」

そう言ってスタッフの方がメニュー表みたいなのを渡してくる。

カシオン「あ、じゃあオレンジジュースを」

北星「私も同じのでお願いします」

スタッフ「かしこまりました。それではお飲物とお料理をご用意いたしますのでしばらくお待ち下さい」

そう言ってスタッフの方は次の人へ次の人へと足を運ぶ。

自分はてっきりこういう場所はお酒だけしかないと思っていたが、未成年と察知してからの対応がものすごく速かった、さすがプロのスタッフだ。

カシオン「でも料理を用意するってどういう事だろう?僕ら何も注文してないけど…」

北星「うーん…ねえカシオン、さっきのチケットもう一度見せてくれる?」

カシオン「う、うん」

自分はポケットからさっきの食事予約券を取り出して北星に渡す。しばらくして北星がまじまじと予約券を見ていた時に突然驚きだす。

北星「カシオン!!ちょっとこれ見て!」

北星が見せた予約券のある部分、そこには値段が書かれていたが…。

カシオン「…二人分で24000円?!」

これにはさすがの僕もびっくりした、しかもよく見てみたらディナーコースの為の予約券だった事。

焦っていろいろ見落とし過ぎたせいで頭が混乱してる。

そしてこれから出てくる料理が想像を超えるとんでもない料理だという事をこの時はまだ知らなかった。

 

続く!!