第6話
砂煙と土煙が落ち着き、その中から出てきたのは、青髪の人間だった。
???「イテテ……なんなんだここは…?」
その人間は辺りをキョロキョロしている。
ミカンはその姿を見ても大した反応は無かった。
元々自分の時代で人間は嫌ってほど見てきているのもあるが、そもそも人間に対しての抵抗がない。
さらに実はこの島に来てから自分が人間の言葉を話せるようになっているのに気づき、今話しかけようか迷っていたが、その前にアランの方を見てその気が変わった。
アランの様子がおかしいとミカンが気づいた。
アランの手が明らかに震えていたからである。
そしてそんな事は知らずに青髪の人間はこっちの存在に気づいた。
???「ん…?あれってポケモンだよな…?こっちではポケモンがいるのか…?てか言葉って通じるのか……?」
青髪の人間はアラン達を見るなり不思議そうな感じで何がボソボソ言ってる。
そして満を持したように話しかけてきた。
???「おーい、そこの2人!こっちの言葉が分かるか?」
時空の奥底で嵐に飲み込まれたキウシだったが、気づいたらどこかにたどり着いていた。
地面が砂浜のおかげてどこも痛めずに助かったが、周りが砂煙や土煙で何も見えない。
しばらくしてようやく晴れてきたが、そこにいたのはキウシもゲームとして知ってたグレイシアと、その奥の茂みにイーブイがいた。
キウシ「ん…?あれってポケモンだよな…?こっちではポケモンがいるのか…?てか言葉って通じるのか……?」
ここがもし2900年だとしたらかなり驚きだが、しかし他の人間の姿が見当たらない。
人間の言葉が通じるか分からないが、今は考えてる場合でもないので一か八かで話しかけてみる。
キウシ「おーい、そこの2人!こっちの言葉が分かるか?」
すると、その言葉に茂みのイーブイは反応したのか、少し茂みから出てきた。
しかし茂みから出てきたイーブイが気にしてたのは、どちらかと言うとグレイシアのほうだった。
???「アラン!どうしたの?!」
???「ミカン、下がってなさい」
グレイシアの方がアランと言い、イーブイの方がミカンと言うらしい。
と言うより、2人とも人間の言葉を話していたのが驚きだった。
それに、グレイシアの方は刀を構えて明らかに戦闘態勢だった。
アラン「……人間……私達を…苦しめた元凶……!」
ミカンはアランの声がいつもと違うと感じていた。
さらに言えば目つきが今まで見たこともない怒りに満ちた目をしていた。
アラン「お父さんとお母さんの仇!!!」
そう叫んだ瞬間、アランはキウシに襲いかかる。
キウシ「うわっ!まじかよっ!」
キウシも突然の事に1歩遅れて臨戦態勢を取る。
アラン「死になさい!!」
アランが刀を振り下ろす。
キウシ「くそっ!ギガソード!!」
キウシが慌てて腕を構える。
そして刀を腕で受け止めた。
アラン「なっ…?!腕で?!」
キウシ「悪いな、そう簡単にはやられはしないぞ!」
キウシが使ったギガソードは、腕に自分の力を凝縮し、それを腕に纏うように放つ事で、腕にオーラのようなモノが現れ、剣のように使う事が出来る技だ。
ちなみにこれはメガソードもあるが、2つとも大した差は無い。
アラン「くっ…生意気な!!」
アランが素早い速度で刀を連続して繰り出してくる。
そしてキウシもそれを受け止めるが、徐々にオーラが弱まっていくのである。
ギガソードもメガソードも、腕に力を凝縮して放つ関係上、その凝縮が追いつかずに連続してオーラにダメージが蓄積すると、一時的に腕にオーラが纏えなくなる。
アランの素早い連続攻撃によりキウシは腕にオーラを纏えなくなったのだ。
キウシ「ちっ…!早いな…!」
慌ててアランとの距離を取るが、アランもすかさず詰め寄る。
アラン「これでトドメよ!!!」
アランが渾身の一撃を繰り出す。
時は西暦2700年のある日。
キウシはダイキから呼び出しを受けて、ダイキの研究室に来ていた。
ちなみにダイキはバカではあるが、時空警備隊の隊員達の武器などを作ったりしている。
キウシ「おいダイキ、呼び出しとは何事だ?」
キウシが来るとダイキは早速何かをキウシに手渡す。
ダイキ「キウシ、お前の新しい武器だ。これを付けとけ」
そう言って手渡されたのはネクタイのようなものだった。
キウシ「なんだこれ?ネクタイ?」
ダイキ「まあ端的に言えばネクタイソードとでも言うべきか」
キウシ「これを今のネクタイと交換しとけと?」
ダイキ「まあ聞け。キウシは兄ちゃん(スバル)と同じように接近戦を多くこなすだろ?でもいつもギガソードだけ頼って、結局凝縮が追いつかずに使えなくなる事も多いしな」
実際キウシは中距離戦を得意としているが、短距離戦も得意としている。
しかし、短距離に対しての攻撃手段が少ないのが現状なのだ。
キウシ「そう言われると何も言い返せないな…」
ダイキ「そこでこいつだ。いざって時にこのネクタイの結び目を掴んで引っ張れば、後ろのホックが一定の力で取れる仕組みになってる。さらに、いつものギガソードと同じように腕に力を込めれば、少ない力でこのネクタイに力が浸透して剣のように固くなるのさ」
キウシ「信じられないなぁ…」
ダイキ「さらに、力を込めれば込めるほど、固くもなって鋭くもなる。ようは使い方次第って事さ」
ネクタイソードばギガソードど違って、腕に力を凝縮する必要がないので、一定の力を加えてるだけで剣になるのだ。
まさにキウシが苦手としている部分を補うのには十分な装備である。
ダイキ「まあ力はそんな加えなくても固くなるから、柔らかめに行けよ。強く込めすぎると、結局力の使いすぎでダウンするからな」
アランの一撃が迫る中で、キウシは咄嗟にネクタイの結び目を引っ張り、自分の手に力を込める。
キウシ (ダイキのやつ、力をあまり使わなくても良いとか言ってたが、まだ使った事もない物だし、不安もある。ならば、7割くらいの力でどうだ!)
キウシが手に力を込めた瞬間、ふにゃふにゃだったネクタイが一気に固く鋭くなる。
キウシ「ネクタイソード!!」
キウシのネクタイソードにアランの刀が触れた瞬間、アランの刀が真ん中から折れてしまった。
アラン「……そ…そんな……!」
アランは何が起こったのかも分からない状態だったが、一方のキウシは。
キウシ「……ダイキ…これは…やり過ぎだ……」
唖然としてるキウシもネクタイソードがここまで鋭く固くなるとは予想外で、明らかに力を込めすぎて相手の刀の耐久値を一撃で削ったのだった。
まさに、やり過ぎると鋼より固くなる品物だった。
刀が折れてしまったアランはその場に座り込んでしまう。
アラン「私の……そんな……」
自分の刀を見てただただ呆然としていた。
キウシ「えっと…すまない。まさかここまでやばい武器とは思わなくてな……」
しかし、アランは再び立ち上がり、折れた刀で再び構える。
アラン「たとえ刀が折れても…それでも仇は撃つ…!」
アランはまさに捨て身の特攻を仕掛けてきた。
キウシはこれ以上の戦闘を避ける為に、ネクタイソードをしまって、別の構えをする。
キウシ「多分、何か勘違いしてるのだろう。だったら!」
キウシの髪が突然黒く変化した。これがキウシのVYモードの発動の時である。
VYモードではギガソードやネクタイソードなどの力は使えなくなるが、空中浮遊やエスパー系の技などが使えるようになる。
キウシ「俺個人の恨みでない事を祈るぞ…。催眠術!!」
手をかざすと、アランの周りを音波みないなものが包み、やがてアランは力が入らなくなり、その場に倒れこもうとしていた。
キウシ「おっと危なっ!」
顔面から砂浜に倒れ込みそうになったアランをキウシは慌てて駆け寄り抱き抱える。
アラン「……仇…取れなか……た…」
そのままアランは眠りについてしまう。
キウシはそのままアランを抱き抱えたまま、茂みに隠れてたミカンに近寄る。
ミカンは戦いをただ見てる事しか出来なくて、呆然としていたが、キウシが近づいてきてビビっていた。
ミカン「え…えっと……」
キウシ「すまないが、この子の家を知ってるか?出来れば家に送り届けたいのだが…」
ミカンはキウシから意外な発言が出たので驚いていた。
てっきり自分もアランと同じようにされて虐待でもされると思っていたからだ。
ミカン「わ、分かりました…」
ミカンもアランが無事ならそれでいいと、キウシをアランの家に案内した。
アランの家に着いて、キウシはアランをベッドに寝かす。
ミカンはとりあえず椅子に座ったままでいる。
キウシ「それにしても…かなりの殺意むき出しで襲ってきたが、君は何か知ってるか?」
キウシはミカンにアランが襲ってきた理由を尋ねるが、ミカンも分からないと言う。
キウシ「俺の催眠術を受け付けたという事は、俺個人への恨みがないのは明白ではあるが…」
ミカン「あの、催眠術って言いましたけど…どういう事ですか?」
キウシ「あぁ、俺の催眠術は俺個人への恨みさえ無ければ基本誰にでも効く技なんだよ。あれだけ本気で襲ってきた割には、俺個人への恨みはないと見たから不思議でな」
アランはまだミカンに過去の事を話してもいなかったので、アランの変貌ぶりに驚いても不思議ではなかった。
キウシ「自己紹介が遅れたな。俺は佐藤キウシだ、よろしく」
ミカン「わ、私はミカンです…」
キウシ「ミカンか。ならミカン、1つ聞いてもいいか?」
ミカン「はい、何でしょうか?」
キウシ「ここは、西暦何年だ?」
つづく