みちのく旅行記

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オリジナル物語「時空警備隊」 第3話

 

第3話

 

ワームホールに飛び込んだキウシだったが、キウシがスバルに言った通りで、ワームホールの時空は全く安定していなかった。

ワームホールの中はまるで嵐のようになっており、キウシはVYモードで自分の姿勢を制御しつつ進んでいく。

しかし、進んでいくにつれてその激しさは増していき、キウシがしばらく進んで突然変な波に飲み込まれ、制御が効かなくなる。

キウシ「くそっ!マジか!!」

慌てて体勢を立て直そうとするが、勢いが強すぎて波に流されてしまい、もはや制御不能だった。

キウシ「うわぁぁぁぁぁ!!!!」

キウシは悲鳴をあげながら時空の奥深くへ落ちていった。

 

※ここから先の物語はあらゆる時代が出てきますが、全て作者の妄想で作り出されたフィクションですので、それに関する批判などは御遠慮下さい。

 

ここで時系は変わり、西暦2900年に遡る。

この時代では現代(読者様達の生きてる時代を表す表現になりますので、是非覚えておいて下さい)とは違い、空想が現実になったりしている時代となってます。

特に1番の発展はポケモンの物体化です。

今まではゲームの世界でしかなかったポケモンが、西暦2850年頃からファン達の研究によってその姿を作り出す事に成功し、物体化にも成功。さらに他の動物達と同様に育つ事によって意志を持ち、まさに生きてるポケモンが続々と作られるようになりました。

その結果、西暦2900年には世界中にポケモンが現れ、まさにゲームでの生活と同様で人間とポケモンが共存する時代になったのです。

そして、話はこの時代のヨーロッパに出来たある王国の下町から始まります。

 

この頃、ヨーロッパでは様々な内紛が勃発し、様々な派閥の争いが絶え間なく続いていました。

そして、その中で唯一生き残ったハルス派という集まりが王国を設立し、いわゆるハルス王国を立ち上げたのだった。

無論この横暴なやり方に各国は承認はせず、内紛後の一切の支援も行わないと決めてかかったのだ。

その結果、ハルス王国の政策によるしわ寄せは市民達に波及した。生活は貧困にまで陥っていき、先程話した人間とポケモンが共存なんてしている場合ではなくなっていたのだ。

そして、かつては1人の主人と共にいたが、内紛によって主人を亡くし、この貧困に染まりきった真っ暗な下町に飢えを凌ぐ為に食べ物を盗むイーブイのメスが1匹いた。

そしてまた夜にも、このイーブイは当たり前のように食べ物屋から蜜柑を1つ盗んだ。

「あっ!おいこら!待て!!!」

食べ物屋の店主は慌ててイーブイを追いかけるが、その速さにはついて行けず、結局逃げられてしまうのであった。

 

そのイーブイは暗い裏路地で盗んだ蜜柑にかじりついていた。

しばらく食べるのに夢中になってたせいか、裏路地の奥から誰かが歩いてきて、目の前に立つまでイーブイは気づかなかった。

突然の事にイーブイは慌てながらも目の前に立ちはだかる者に対して威嚇をしていた。

その人物は真っ黒なマントを羽織っており、フードも被っていた為、顔は認識出来なかった。

しかし、その謎のマントの人物はイーブイをただ見ているだけで、何も手出ししようともしなかった。

そして、謎のマントが初めてイーブイに話しかけた。

「哀れなものね、この国がおかしくなってからこの子達もみんな貧困になっていくのかしら」

そうマントの人物は話し出す。声からすると女性なのは間違いなさそうだが、そもそもポケモンに話をする事が間違いなのである。

それは、当たり前のようにポケモンと人間では言葉は通じないからである。

ある能力を持ち合わせている場合を除いては…。

そしてイーブイは過去の主人に色々な言葉をかけてもらえた事で、一応相手が何を言ってるのかを理解する事はできていた。

謎のマントの人物に言葉に、伝わるはずのない言葉をイーブイは発した。

ブイブイ…ブイブーイ」

まさに普通に考えれば何を言ったのかは分からない。

今のを翻訳すると、「何よこの人…言葉も分からないのに話しかけないでよ」と言ってたのだ。

そしてもちろんそれが伝わるはずはない…。

「あら、言葉が分からないなんて一言も言ってないわよ」

謎のマントの人物が放った言葉にイーブイは驚き、焦った。

「ブイ?!ブイブイィ?!(え?!なんで言葉が分かったの?!)」

そしてまた伝わるはずのない事をイーブイは口にするが、やはり謎のマントの人物には伝わっているのであった。

「もちろん分かるわ、私はそういう人間なのよ」

そう言うと、謎のマントの人物はイーブイに向かって手を伸ばし、何かを唱え始めた。

するとイーブイのいる地面が光り、イーブイを包み込む。しかししばらくするとその光は消えていった。

イーブイは何事かと思ったが、自分が普通に人間の言葉を話せるようになってるのに気づく。

「え…どうして私、なんで人間の言葉が…」

イーブイは人間の言葉を発せれるようになっていたのだ。

「その魔法はあなたが意思を通じさせたい人にだけ言葉が話せる魔法よ。今は私が対象だから話せるようになってるだけ」

そう言うとマントの人物はフードを取ってその顔を見せる。

その人物はピンク色の髪の毛をして顔つきの良い女性だったが、肌などは何故かボロボロになっていた。

「私はミリアよ、あなた名前は?」

イーブイは名前を尋ねられるが、そもそも名前をつけてもらってないのだ。

「…普通にイーブイでいいわ」

イーブイはまだ戸惑っていたのだ。自分の身に起きてる事が信じられない為である。

ミリア「それは困るわ、イーブイなんてそこら中にいるんだから、あなたの事はちゃんと1つの個体として呼ばせてもらわないと」

しかし主人にさえ普通にイーブイと呼ばれていたイーブイは「なら適当に名前付けて呼べば?」と返事をする。

ミリアはその返答に返すように、名前を考え始める。

そして考えてる最中にイーブイが食べてた蜜柑に目をつけた。

ミリア「あぁ…なら、あなたが食べてるそれをそのまま名前にするわ。良いわね?」

 

「ミカン」

 

イーブイはそう呼ばれた時、心に不思議な感覚を感じでいた。

かつて主人と過ごしていた時と同様の感覚であり、まるで自分をそう呼んでほしそうに思ってしまうのである。

「…いいわ、ミカンね」

イーブイの事はミカンと適当に命名された。

すると裏路地の大通りの方から何やら大声が聞こえてきた。

「おい!!居たぞ!!!」

ミカンはその声がした方を振り向いた。

そこには王国の警備兵が多数いたのだ。

ミリアはそれに気づくと「やばいわ…」と言いながらフードを被って、ミカンが食べかけていた蜜柑を取り、ミカン自身を抱きかかえる。

ミカン「は?!ちょっと何?!」

慌てて逃げようとするが、ミリアはその手を離さなかった。

ミリア「逃げるわよ!」

そう言うと、ミカンはミリアに抱えられたままどこかへ逃げていくのであった。

 

しばらく走った場所は噴水広場の場所だった。

時間が既に夜なので、人気は無く、警備兵も上手く撒いたようだった。

ミリア「ここならひとまず安全ね」

そう言うと、ミカンを地面に下ろす。

ミカン「ちょっと!なんで私まで逃げなきゃならないのよ!」

ミリア「あなたも警備兵に一緒に居る所を見られたからよ。あのまま私だけ逃げても、あなたが捕まる事に変わりはなかったわ」

ミカン「余計なお世話よ!私1人でも逃げれたわ!」

怒り心頭なミカンに対してミリアはとても冷たかったのだ。

ミリア「…貴方をあの子達と一緒にさせたくはなかったのよ」

ボソッっとミリアが小声で言うが、ミカンはそれを聞き取れなかった。

ミリア「まあいいでしょ、とりあえずこれ、返すわ」

そう言ってミカンの前に差し出したのは、先程まで食べてた食べかけの蜜柑だった。

しかし、それを差し出した瞬間にミリアのお腹がグーっと鳴る。

ミリアは少しそっぽを向きながら、「早く食べてしまいなさい」と言いつつ蜜柑を差し出してくる。

それを見てたミカンはほんの少し笑う。

そしてミリアに「もうお腹いっぱいだから食べて良いわよ」と告げて、受け取りを拒否した。

ミカン (私、今少し笑えたのね。ほんと笑うのなんて久しぶりね…)

そしてミリアは「ありがとう」とだけ言って、残ってた蜜柑を全部食べた。

そして2人はしばらく噴水のベンチに腰掛けていた。

しばらくは少し距離を取っていたが、夜という事もあって冷え込んでおり、ミリアが寒そうにしている姿を見たミカンは、ため息をついてミリアの傍に近づき、ミカンはミリアの膝の上に乗って座る。

その行動に驚いてたミリアだったが、しばらくしてミリアはそんなミカンの頭を撫でていた。

ミリアの撫で具合が良かったのか、思わずうっとりしていた。

かつて主人にも同じ事をしてもらっていたが、それより手馴れているのが分かったのだ。

そしてミカンは思い切ってさっきの事を聞いてみた。

ミカン「ねぇ、なんで警備兵から逃げてるのよ。悪さでもしたの?」

ミリア「唐突ね、私は何もしてないわよ」

ミカン「じゃあなんで追われているのよ」

そうミカンが聞くとミリアは黙り込んでしまう。

ミカン「…まあいいわ」

しばらくはお互いに沈黙していたが、ミリアが話し始めた。

ミリア「突然の事だったわ。ここの国の王様が部下になれとか突然命令してきたから、それを断っただけ」

詳しく聞くと、ハルス王国の王であるハルス王に突然呼び出され、部下として働けと強制されたのだ。

呼び出された理由については話してくれなかったが、その命令を拒否したら警備兵から追われる毎日になったという。

ミカン「理不尽な王ね…」

ミリア「ほんとそれよ。勝手に王だなんて名乗ってるけど、結局暴力によって勝ち取った王座であって、あんなやつは本物の王ではないわ」

ミカン「それなら拒否したくなる気持ちも分かるわ。でも、逆らっただけでそんな警備兵に追われるほどに狙われるの?」

ミリア「それは……」

ミリアが言葉を紡いだ時だった、ハッと気配を感じで周りを見渡すと、先程の警備兵達に囲まれていたのだった。

ミカン「えっ?!いつの間に…!」

ミリア「私とした事が…油断したわね」

既に四方八方と警備兵に囲まれており、まさにミリアとミカンにとって絶望的な状況だった。

そして警備兵の1人が口を開く。

「追い詰めたぞ。猛獣使いのミリア!」

ミカンは警備兵が言った言葉でミリアが狙われた理由が少しハッキリしたのだ。

この世界の人間には時より特殊な能力を持った人間がいるのだが、猛獣使いはその能力の1つ。

名の通り猛獣達を従えていく事が出来る能力だが、ミリアはただの猛獣使いではなく、魔法も使う事が出来るので、ミカンに使った魔法と同じように猛獣達とコミュニケーションを取る事が出来るので、普通の猛獣使いより連携が取りやすい。

ミカンはミリアの力が王にとって市民への弾圧力になると考えて、王が部下になるようにと命令したのだ。

ミカン「…そういう事だったのね」

ミリア「黙っててごめんね、あまり正体を知られたくなかったのよ」

そしてミリアはミカンの前に立つ。

警備兵は既にミリアとミカンを包囲したまま、すぐにでも確保しようとしていた。

ミカン「で、この状況どうやって逃げるのよ」

ミリア「流石の私もここまで囲まれたら逃げれないわ。ミカンだって分かっての事でしょ?」

ミカンは周りを見るが、警備兵同士の間にも隙間はなく、もはや逃げ場無しの状況だった。

するとミリアはとんでもない事を口にした。

ミリア「あなただけを逃がすわ」

ミカン「…は?!なんで私だけ?!」

突然の言葉にミカンは驚くが、そんなのはお構い無しにミリアはミカンを抱きかかえる。

ミリア「あなたには、あの子達みたいにはなってほしくないのよ」

ミリアがミカンの耳元でそう呟くと、再び何かを唱え始めた。

そして地面が大きく光り出す。

「な、何だ?!」

警備兵達が慌てふためく。

そして地面から煙が吹き出し、中心地以外は見えなくなる。

そしてミカンにこう告げる。

ミリア「あれは目くらましよ。そしてこれは私が今使える最強の魔法よ。この魔法は一人分しか使えない上に、使ったら体がしばらく動けなくなるけど、少なからずミカンだけはどこかに逃がしてあげれるわ」

すると再び何かを唱え始め、唱え終わるとミカンの頭にキスをする。

するとミカンがどんどん宙に浮き始める。

ミカン「ちょっ…ちょっと!何よこれ!あなたはどうするのよ!!」

少しずつミリアの手から離れていき、ミカンはどんどん高く空へ上がっていく。

ミリア「私は、もう目の前で何かを失う事は嫌なの。私の猛獣達がこいつらに殺されたみたいに」

ミカン「…え?」

ミリアは命令を拒否した後、結果として警備兵に追われる目にあっていたが、自分が従えていた猛獣達を迎えに行ったところ、既に警備兵が先回りしており、ミリアが従えていた猛獣達はなんと警備兵達によってすべて殺されていたのである。

ミリアはその光景を見て泣きながら逃げるしか出来なかった。

ミリア「でも、今度は逃がせてあげれたわ。それだけでも満足よ」

ミカン「ちょっと待ちなさいよ!!なんで下に降りられないの!!」

ミカンは慌てながらも下に降りようとじたばたするが、それでもどんどん上昇を続ける。

ミリア「あなたが捕まれば少なからずこいつらに殺されるわ。どのみち逃げれないならあなただけを!」

ミリアはどんどん上昇していくミカンを見ていた。

ミカン「ミリア!」

ミカンはその名前を必死に叫んだ。

ミリア「…やっと、私の事を名前で呼んでくれたわね」

その時のミリアはいつの間にか泣いていた。

ミリア「ミカン、元気に生き延びなさいよ!」

ミリアは自分の涙を拭うと、ミカンの方に手を向ける。

ミリア「ジャンプ!!!」

そう唱えると、ミカンの体が光り始め、一瞬にしてその姿が消えたのだった。

そして、力を使い果たしたように、ミリアはその場に倒れる。

ミリア「……ミカ……ン…」

そしてミリアは気絶してしまった。

やがて目隠しとして発動してた煙は消え、警備兵はミリアを捕らえた。

「おい!もう1匹の方も探し出せ!!」

しかし、警備兵は血眼になって探すが、どこにもいなかったのだ。

何故ならミリアが最後に使った魔法は、まだ未完成ながらも空間魔法を自己流で作ったオリジナルの魔法であり、これはタイムワープと言っても過言ではなかった。

ミリアは最後、一か八かの賭けに出て、それに勝ったのであった。

しかし、どこに飛ばされたのかは飛ばした本人にも分からない為、飛ばされたミカンはどこに行ったのかも分からなかったのだ。

 

つづく